はじめに
本記事の目的
本記事は、有給休暇(有給)とお金の関係をやさしく説明するために書きました。制度の基本から、取得時の給与扱い、使わなかった有給の買取や計算方法、法改正による義務化と実務での対応策まで順を追って解説します。
読者想定
- 有給の扱いがよく分からない方
- 退職や部署異動で未消化の有給が気になる方
- 会社の人事・総務の方が制度理解を深めたい場合
読み方のポイント
専門用語をできるだけ使わず、具体例を交えて説明します。各章は独立して読めますので、気になる項目からお読みください。途中で計算が出てきますが、段階ごとに丁寧に示します。
有給消化とは?お金との関係
有給消化の意味
有給消化とは、会社から付与された有給休暇を実際に使うことです。有給休暇は「休んでも賃金が支払われる日」と考えてください。目的は心身の回復や家庭・私生活との調和です。
取得したときの給与の扱い
有給を取ると、基本的に普段と同じ給与が支払われます。例えば月給制の方は通常の月給が変わりません。アルバイトや時給の方は、労働実態に応じた基準で日給・時間給相当額が支払われます。具体例:月給30万円、所定労働日20日なら日給は1万5千円です。
未消化分をお金に換える場合
原則として、会社は従業員に未消化分を買い取る義務はありません。ただし退職時など、未消化の有給について法令に基づき金銭で清算される場合があります。清算額は未消化日数×日給相当額で計算されることが一般的です。例:上の例で5日残っていれば7万5千円となります。
日常で気をつけること
有給の扱いは就業規則や労働契約で細かく定められます。不明点は人事に確認し、取得や未消化の扱いを事前に理解しておくと安心です。
有給休暇を取得したときの給与支払い
基本の考え方
有給休暇は「休んでも賃金が支払われる休暇」です。出勤した日の給与と同じ扱いが基本で、取得したことで給与が減ることはありません。
日給制の場合
日給制なら通常の1日分の日給が支払われます。例:日給8,000円なら、有給を1日取ると8,000円が支給されます。
月給制の場合
月給を所定労働日数で割って1日分を算出し、その額に有給取得日数をかけます。例:月給30万円、所定労働日数20日なら1日15,000円です。
時給制の場合
時給×所定労働時間×有給取得日数で計算します。半日や時間単位で取得する場合は、取得時間分だけ支払われます。
注意点
手当や残業代、賞与は別の扱いです。欠勤や遅刻とは異なり、有給は給与の控除対象になりません。具体的な計算や申請方法は就業規則や労使協定を確認してください。
未消化有給休暇の買取(お金に換える)
概要
未消化有給休暇の買取とは、使わなかった有給に相当する金額を会社が支払うことです。会社が従業員に対して金銭で補填することで、休暇の代わりにお金を受け取れます。
法的な扱い(簡単に)
労働基準法では、原則として有給休暇の買取は認められていません。ただし、退職時に残った法定の有給休暇については、例外的に買取が行われるケースが一般的です。就業規則や雇用契約で別途定めがある場合は、その内容に従います。
買取額の算出(わかりやすく)
通常は「1日分の賃金×未消化日数」で計算します。1日分の賃金は日給のほか、月給者なら平均日額を使うことが多いです。例:日額1万円で未消化5日なら、1万円×5日=5万円です。
手続きと注意点
- まず就業規則や退職時の書類で買取の有無を確認してください。
- 買取がある場合、計算方法や支払時期を必ず明示してもらいましょう。
- 賃金の扱いや源泉徴収など税務上の取扱いが発生することがあります。疑問があれば人事担当や社労士に相談してください。
未消化有給休暇の買取額の計算方法
日給制
日給制では、1日分の給料(所定の日給)に未消化日数をかけます。例:日給1万円で未消化が3日なら、1万円×3日=3万円です。
月給制
月給制では、月給をその月の所定労働日数で割って1日分を出し、未消化日数をかけます。例:月給30万円、所定労働日数20日、未消化が2日なら、(30万円÷20日)×2日=3万円です。
時給制
時給制では、1日の所定労働時間と未消化日数を使います。例:時給1,000円、所定労働時間8時間、未消化が2日なら、1,000円×8時間×2日=1万6,000円です。
支払い方法と注意点
買取額を賞与として支払うことがあります。賞与で支払う場合は社会保険の届け出が必要になることがあるため、会社が手続きを確認します。また、会社の就業規則で計算方法や端数処理が定められている場合がありますので、確認してください。
計算時のポイント
- 所定労働日数や所定労働時間は会社ごとに異なります。必ず就業規則や労働契約を確認してください。
- 税・社会保険料の取り扱いは支払い方法で変わります。疑問があれば人事・総務に相談してください。
有給消化の義務化と未消化分の扱い
改正のポイント
2019年4月の労働基準法改正で、年間10日以上の有給が付与される労働者に対して、事業者は最低5日間を取得させる義務を負いました。企業は取得促進の措置を講じる必要があります。具体的には、時季指定(取得日を指定する)や計画的付与などの方法があります。
企業の義務と具体例
企業は社員が5日を取得できるように管理します。たとえば、社員が希望しない場合でも、会社が取得日を指定して休ませます。義務を怠ると行政指導や罰則の対象になる可能性があります。
未消化分の繰越と時効
使わなかった有給は原則として翌年度に繰り越せます。しかし、有給の権利は付与日から2年で消滅します(時効)。例:2023年4月1日に付与された有給は2025年3月31日までに使わないと消滅します。
退職時の扱いと買取
退職時は未消化分を賃金として精算する必要があります。通常は会社が買取る形で清算します。就業規則で扱いを確認してください。
困ったときの相談先
労働基準監督署や労働相談窓口に相談できます。社内で解決しにくい場合は外部の相談を利用してください。
有給消化を促進する方法
1) 半日・時間単位で取得できる仕組みを作る
半日や時間単位の取得を認めると、短時間の用事でも気軽に休めます。具体例:午前中だけ、午後2時間だけ。手続きは簡単にし、申請フォームやチャットで申請できるようにします。
2) 有給推進の時期や日程を決める
会社として“有給推進ウィーク”や繁閑に合わせた休暇推奨日を設けます。例:夏季の閑散期に取得推奨。部署ごとに目安日を提示すると調整がしやすくなります。
3) チーム単位でのタスク管理を整備する
誰が休んでも仕事が回るように業務を見える化します。引き継ぎテンプレート、代替担当リスト、共有カレンダーを用意してください。週次の短いミーティングで確認すると安心です。
4) マネジメントの行動を明確にする
上司は率先して有給を使い、部下に取得を促します。取得状況を定期確認し、未取得が続く人には個別に声をかけます。心理的安全性を高める言葉がけも重要です。
5) 運用のポイントと注意点
運用は簡単にし、柔軟性を持たせます。繁忙期は事前調整を義務化するなどルールを設けつつ、個人の事情も尊重してください。
有給消化とお金の関係まとめ
有給休暇とお金の関係を簡潔にまとめます。必要な点を分かりやすく整理しました。
ポイント
- 有給を取得しても給与は減りません。有給は賃金が支払われる休暇ですので、取得しても手取りが減ることは基本的にありません。
- 未消化有給の買取は原則として禁じられています。勤務中に会社が買い取ることは認められていません。ただし、退職時の未消化分や、労基法を上回る会社独自の有給については買取が認められる場合があります。
買取額の計算(目安)
- 計算は日給額に未消化日数をかけることで求めます。日給の出し方は会社規定により異なるため、詳細は就業規則や給与規定を確認してください。
効果・期限
- 有給の取得は義務化されています。未消化分は翌年度に繰り越されますが、2年で時効により消滅します。
注意点と行動例
- 退職前は残日数を確認し、会社と合意のうえで処理方法を決めてください。
- 会社の就業規則を読み、不明点は人事に相談すると安心です。
- 計画的に有給を消化すると、金銭面だけでなく心身の休養にもつながります。


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