源泉徴収票と給与所得の基礎知識と重要ポイントを徹底解説

目次

はじめに

本資料の目的

この章では、本資料の目的と読み方を説明します。本資料は、源泉徴収票に記載されている「給与所得」という項目の意味や見方、計算方法をわかりやすく解説することを目的としています。給与収入と給与所得の違い、給与所得控除の考え方、そして源泉徴収票上で特に重要な4つの項目に焦点を当てます。

なぜ知っておくと良いのか

源泉徴収票は年末調整や確定申告、住宅ローンの審査などで必要になります。正しく読み取れると、手取りの把握や税金の過不足の確認、節税対策の検討がしやすくなります。日常の家計管理にも役立ちます。

対象読者

給与で収入を得ている方、転職・入社したばかりの方、年末調整や確定申告に不安がある方に向けています。専門知識がなくても理解できるよう、専門用語は最小限にし具体例を交えて説明します。

本書の構成(全7章)

  • 第1章 はじめに(本章)
  • 第2章 源泉徴収票とは
  • 第3章 源泉徴収票の4つの重要項目
  • 第4章 支払金額 – 1年間の総支給額
  • 第5章 給与所得控除後の金額 – 実質的な「所得」
  • 第6章 所得控除の額の合計額
  • 第7章 源泉徴収税額 – 納めた所得税

各章で実際の見本や計算例を示します。手元に源泉徴収票を用意して順にご覧になると、理解が深まります。

源泉徴収票とは

概要

源泉徴収票は、1年間に受け取った給与や賞与の金額と、会社が給与から差し引き税務署に納めた所得税の額、各種控除などを記載した重要な書類です。税金の支払状況を証明する役割を持ち、税務手続きでよく求められます。

交付時期と義務

  • 会社は翌年の1月31日までに従業員へ交付する義務があります。
  • 退職した場合は、退職日から1カ月以内に交付されます。

主な用途

  • 確定申告や年末調整の確認
  • 住宅ローンや各種融資の申請時の収入証明
  • 転職時の前職の所得確認(入社手続きで提出を求められることが多い)

住民税について

源泉徴収票には住民税の納付額は記載されません。住民税は市区町村が管理するため、別の書類や手続きで扱われます。

紛失や再発行

紛失した場合は勤務先に再発行を依頼してください。退職後は速やかに連絡すると手続きがスムーズです。

源泉徴収票の4つの重要項目

イントロ

源泉徴収票で特に押さえておきたいのは次の4つです。見方を知れば、年収や税金の流れが分かりやすくなります。

1. 支払金額(1年間の総支給額)

1年間に会社から受け取った総額です。基本給、残業代、賞与(ボーナス)などが含まれます。たとえば、月給20万円でボーナス50万円なら、年間の支払金額は(20万×12)+50万=290万円です。

2. 給与所得控除後の金額(実質的な「所得」)

支払金額から給与所得控除を引いた金額で、税金の計算に使う実際の所得です。給与所得控除は働くための必要経費のような扱いです。支払金額が高いほど控除額の計算方法が変わります。

3. 所得控除の額の合計額

医療費控除、社会保険料控除、配偶者控除や扶養控除など、個人の事情に応じて差し引ける金額の合計です。たとえば社会保険を多く払っている人や扶養家族がいる人は、この合計が大きくなり、課税される額が小さくなります。

4. 源泉徴収税額(納めた所得税)

1年間に会社が給与から天引きして税務署に納めた所得税の合計です。年末調整で過不足が調整され、払い過ぎなら還付、足りなければ追加で納付します。源泉徴収票のこの数字で、1年分の税の精算状況が分かります。

支払金額 – 1年間の総支給額

定義

支払金額は、1年間に会社から支払われた給与の合計額を指します。源泉徴収票では「支払金額」の欄に記載され、課税対象となる収入の総額です。

含まれるもの(代表例)

  • 基本給
  • 残業代や深夜手当
  • 賞与(ボーナス)
  • 役職手当や家族手当などの課税手当

含まれないもの(代表例)

  • 非課税の通勤手当(一定額までは非課税)
  • 福利厚生の実費弁償や会社が負担する一部の給付

簡単な計算例

月給25万円、残業代3万円、年2回の賞与50万円の場合:
(25万円×12)+3万円×12+50万円=3,530,000円。これが支払金額の目安です。

なぜ重要か

支払金額はそのまま課税のベースになります。年末調整や確定申告、ローン審査などで使われるため、金額の内訳を確認しておくと安心です。

給与所得控除後の金額 – 実質的な「所得」

概要

給与所得控除後の金額は、給与収入(いわゆる年収)から給与所得控除を差し引いた額で、実質的に税金の対象となる「所得」です。収入と所得は別物であることをまず押さえてください。

給与所得控除とは

給与所得控除は、給与を得るために必要な経費の概算として収入から差し引かれる金額です。実際の領収書を集める必要はなく、年収に応じて決まった額や割合が使われます。これにより、個々の実費を詳細に示さなくても簡便に所得を算出できます。

計算の手順(かんたん)

  1. 源泉徴収票の「支払金額」(年収)を確認します。
  2. 年収に応じた給与所得控除額を税法の基準表に当てはめます。控除は段階的に決まっています。
  3. 支払金額から控除額を差し引きます。結果が「給与所得控除後の金額」です。

具体例(わかりやすい仮例)

  • 例1:年収300万円の場合(仮に控除額を65万円とする)
    支払金額300万円 − 給与所得控除65万円 = 給与所得控除後235万円

  • 例2:年収800万円の場合(仮に控除額を195万円とする)
    支払金額800万円 − 給与所得控除195万円 = 給与所得控除後605万円

これらはイメージしやすくするための仮の数値です。実際の控除額は税法で定められた表や計算式に沿って決まります。

注意点

  • 控除額は年収の幅ごとに異なります。必ずご自身の年収に合った控除額を確認してください。
  • 給与以外の収入(副業など)がある場合は、別に所得計算が必要です。給与所得控除後の金額は所得税や住民税の基礎となりますが、ほかの所得と合算して課税されます。

所得控除の額の合計額

説明

所得控除の額の合計額は、配偶者控除や扶養控除、生命保険料控除など、個人ごとに認められるさまざまな控除を合算した金額です。給与所得控除後の金額からこの合計額を差し引くことで、実際に税金がかかる課税所得が決まります。会社が年末調整で使う重要な項目です。

主な控除項目(例と短い解説)

  • 配偶者控除:収入が一定以下の配偶者がいる場合に受けられます。
  • 扶養控除:子どもや親など扶養している人がいるときに適用されます。
  • 生命保険料控除:支払った生命保険料に応じて控除されます。保険会社の控除証明書が必要です。
  • 医療費控除:1年間にかかった医療費が一定額を超えると申告で控除できます。
  • 社会保険料控除:健康保険や年金などの負担分が対象です。

計算例

給与所得控除後の金額:3,000,000円
配偶者控除:380,000円
生命保険料控除:50,000円
医療費控除:100,000円
所得控除の合計:530,000円
課税所得:3,000,000円 − 530,000円 = 2,470,000円

注意点

控除は証明書類が求められることが多いです。年末調整や確定申告のときに書類を用意してください。控除の種類や上限は個々の状況で異なるため、不安な場合は会社の総務や税務署に相談してください。

源泉徴収税額 – 納めた所得税

概要

源泉徴収税額は、1年間に実際に納めた所得税の合計額です。源泉徴収票には年末調整後の源泉所得税と復興特別所得税の合計が記載されます。給与から差し引かれた税金がどれだけあったかを確認できます。

算出方法

基本の算出式は次の通りです。

(給与所得控除後の金額)-(所得控除の額の合計額)=課税所得

課税所得に対して所得税率を掛け、そこに復興特別所得税(所得税額の2.1%)を加えて税額を求めます。

特例の扱い(住宅借入金等特別控除など)

住宅借入金等特別控除や定額減税のような特例は、最終的な税額に反映されます。年末調整で適用されるため、源泉徴収税額はこれらを考慮した後の金額になります。

具体例

給与所得控除後の金額:3,000,000円
所得控除の合計:800,000円
課税所得:2,200,000円
仮の税率(例):10% → 基本の所得税 220,000円
復興特別所得税:220,000円×2.1%=4,620円
合計の源泉徴収税額:224,620円

注意点

年末調整で不足や過払いが確定することがあります。不足がある場合は追加で納付、過払いは還付されます。確定申告の必要がある方は、源泉徴収票をもとに手続きを行ってください。

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