はじめに
目的
本調査は、休職期間がある場合の離職票の作成方法や記載内容、休職中に退職した場合の失業保険受給との関係をわかりやすく整理することを目的としています。実務で迷いやすい点を具体例で示し、手続きに不安がある方の参考にすることを目指します。
対象読者
会社で労務を担当する方、休職中または休職を検討している労働者、社内で退職手続きを行う方などを想定しています。専門知識がなくても読み進められる表現にしています。
本書で扱う主な内容
- 休職期間を含む離職票の作成ポイント
- 休職中に退職した場合の注意点と失業保険との関係
- 受給条件、給付期間の延長制度、給付日数の目安
- 傷病手当との違いと手続きの連携
- 特定理由離職者の優遇措置についての概要
読み方と注意点
章ごとに実務的な手順と注意点を示します。個別のケースで判断が必要な場合は、ハローワークや社会保険事務所に相談することをおすすめします。
離職票とは何か
概要
離職票(雇用保険被保険者離職票)は、退職後に会社が発行する大切な公的書類です。失業給付(いわゆる失業保険)を申請する際に必ず必要になります。退職の理由や退職日、雇用保険に加入していた期間などが記載されます。
記載される主な項目
- 離職理由(会社都合・自己都合など)
- 退職日
- 雇用保険の加入期間や、直近の賃金に関する情報
これらの情報で受給の開始時期や給付日数が決まります。
発行の流れと届くまでの目安
通常、会社がハローワークに必要書類を提出し、退職後10日〜2週間ほどで郵送されます。会社側の手続きが遅れると時間がかかることがあります。
発行されない場合や請求の扱い
転職先が決まっている場合や、自己都合退職で会社に請求しないと発行されないケースがあります。受け取りに不明点があれば、退職元の人事担当やハローワークに確認してください。
受け取り時の注意点
到着後は離職理由や退職日が正しいか必ず確認してください。誤りがあると失業給付に影響します。訂正が必要な場合は速やかに会社に連絡し、ハローワークと手続きを進めてください。
休職期間がある場合の離職票作成の注意点
休職がある場合の基本対応
長期間の休職があると、離職票や離職証明書の書き方に注意が必要です。休職の開始日と終了日、理由(病気・けが・通勤災害など)を明確に記載してください。できるだけ具体的な日付でまとめます。
労災申請がある場合の特別対応
通勤災害などで労災申請があるときは、医師の診断による「労務不能証明」を添付します。通常は直近2年の記載が基準ですが、労災がある場合は最長4年まで遡って記載可能です。労災の有無を離職票に明示してください。
離職証明書への記載ポイント
休職期間はまとめて離職証明書に記載します。給与の支払いが無く基礎日数が0になる期間も、事実どおり記載します。給与の有無、支払期間、休職中の扱い(就労不能・復職見込みなし等)を正確に書いてください。
記載例(簡単)
・休職期間:2021/4/1〜2023/3/31(休職)
・理由:通勤災害による療養のため(労災申請済)
・給与:無(基礎日数0)
・添付:医師の労務不能証明書
注意点
税務や保険の手続きで書類の不備があると手続きが遅れます。書類作成時は医師の証明書と労災関連書類をそろえ、事実を簡潔に記載してください。必要なら労働基準監督署やハローワークに相談すると安心です。
休職中に退職する場合の重要な注意点
要点の説明
休職中に退職する際は、出勤の有無と給与支払いが重要です。会社に顔を出して出勤扱いになり給与が支払われると、失業状態とはみなされません。すると失業保険が受給できなくなることがあります。傷病手当金についても、給与が支給されると支給要件に影響する場合があります。
具体例で分かりやすく
例:退職前に数日だけ出社して給与が出た場合、その期間は「在職」と見なされ、ハローワークで求職の受理が遅れることがあります。傷病手当金は健康保険の規定で、給与が支給される期間は減額・停止されることがあります。
手続きと確認の仕方
出社の必要がある場合は、事前に会社と書面で取り決めをしてください。退職日、給与の有無、休職終了日の扱いを明確にします。ハローワークと加入している健康保険組合にも具体的に問い合わせてください。
実務上の注意点
・出勤は最小限にして書面で合意を取る。
・給与明細や合意書は保管する。
・不安があれば社労士や労働相談窓口に相談する。
これらを確認すれば、後で受給トラブルになるリスクを減らせます。
失業保険の受給条件と休職期間の関係
基本的な受給要件
原則として、離職前の2年間に被保険者期間が通算12カ月以上あることが必要です。対象は65歳未満の人です。例:退職日の直近2年間で雇用保険の加入期間が合計12カ月あれば、受給資格があります。
休職期間の扱い
休職中でも雇用保険に加入したままであれば、その期間は被保険者期間に含まれます。雇用主が保険料を納めているかがポイントです。無給で保険が止まっている場合は該当しない可能性があります。定年で休職のまま退職した場合も、要件は同じです。
特定理由離職者(条件の緩和)
会社都合など一定の事情がある場合は「特定理由離職者」となり、緩和措置が適用されます。この場合は、離職日以前1年間に被保険者期間が6カ月以上あれば受給資格が認められることがあります。該当例:会社倒産、解雇、契約満了による非更新、勤務条件の大幅な悪化など。本人の病気や介護で退職する場合も、状況次第で特定理由に該当することがあり、診断書や証明書類が必要です。
確認と手続きの流れ
受給資格に迷ったら、ハローワークで確認してください。離職票や雇用契約書、診断書などの書類を持参すると判定がスムーズです。休職中の扱いは個別の事情で変わることがあるため、早めに相談することをおすすめします。
失業保険の受給期間と延長制度
基本ルール
離職日の翌日から原則として1年間が失業保険の受給期間です。この期間内に求職の手続きを行い、要件を満たせば給付を受けられます。
延長が認められる条件
病気やケガなどで30日以上連続して働けない、または求職活動ができない状態が続いた場合、受給期間の延長が認められます。延長は最長で3年間です。
手続きと必要書類
退職後、ハローワークで延長の申請を行います。申請期間は退職後30日〜1年以内とされています。医師の診断書や診療期間がわかる書類を準備してください。窓口で病状と期間を説明すると手続き方法を案内してくれます。
具体例
例:離職日が1月1日なら通常の受給期間はその翌日から1年後の12月31日までです。3月1日から4月30日まで60日間病気で働けなかった場合、申請によりその分を加えて受給期間を延長できる可能性があります。
注意点
延長は受給できる期間を延ばす制度で、給付額の算定方法自体は変わりません。病状を示す客観的な書類が重要です。不安がある場合は早めにハローワークに相談してください。
失業保険の給付金額と給付日数
概要
失業保険の給付金額は、退職前の賃金を基に算出され、おおむね在職中賃金の50〜80%程度が目安です。給付日数は年齢、被保険者期間、離職理由で変わり、加入期間10年以上で最大330日程度の給付となる場合があります。自己都合退職では被保険者期間に応じて90日〜150日が一般的です。
給付金額の計算方法(わかりやすく)
- 賃金日額を出す:退職前6か月の総支給額を180で割ります(1日あたりの平均)。
- 給付率をかける:賃金日額に給付率(目安50〜80%)をかけると1日あたりの受給額になります。
例:6か月合計が144万円なら賃金日額は8,000円。給付率60%なら1日4,800円です。
給付日数の目安
- 自己都合退職:被保険者期間に応じて90日〜150日程度
- 会社都合(解雇など):期間が長くなる場合が多く、条件によっては最大330日程度
年齢が高いほど長めに設定されることがあります。具体の計算はハローワークで確認してください。
具体例
- 月給24万円(6か月で144万円)の場合、賃金日額8,000円。給付率60%なら日額4,800円。90日受給で総額約43万2千円になります。
注意点
- 給付日数や給付率は個別の事情で変わります。必ずハローワークで確認してください。
傷病手当との違い
概要
失業保険(雇用保険)と傷病手当金は目的も条件も異なります。失業保険は離職して求職活動を行う人に支給され、支給期間や日額は雇用保険の加入期間や年齢で決まります。一方、傷病手当金は病気やけがで働けないときに健康保険から支給され、最長で1年6か月が目安です。
支給要件と受給中の扱い
- 傷病手当金:医師の就労不能の証明が必要で、原則として雇用されている間に請求します。金額は標準報酬日額の約2/3が目安です。
- 失業保険:離職後にハローワークで求職の申し込みをして受給します。失業保険を受けるには「働く意思・能力」が求められます。
受給の重複は基本的にできません。傷病手当金を受けている間は「働けない」状態とみなされるため、同時に失業保険を受けることは難しいです。退職後に失業保険を申請する場合は、医師の診断で就労可能と判断されてから手続きする必要があります。
具体例
- 休職中に病気で給付を受けたいとき:まず健康保険に傷病手当金を申請します。
- 休職中に退職して回復後に求職する場合:ハローワークでこれまでの受給状況を伝え、受給資格を確認してください。
最後に
給付期間や金額の計算は個別で異なります。手続き方法や具体的条件は、必ず加入している健康保険の窓口とハローワークで確認してください。


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