はじめに
概要
本稿は、病気を理由に退職する際に必要な退職届の作り方をわかりやすくまとめたガイドです。退職届の基本項目、英語と日本語の書き方例、病名の記載可否、提出時の注意点などを丁寧に説明します。
本書の目的
病気で退職を考える方が、手続きや書類作成で不安を感じずに済むように実用的な情報を提供します。医師や家族、会社と話す際の参考にもなります。
想定読者
・退職を検討している本人
・家族や代理で書類作成をする方
・人事担当者で事例を知りたい方
本書の構成と使い方
各章で具体例やテンプレートを示します。まずは第2章から順に読み、必要に応じて該当章を参照してください。文章は平易にまとめていますので、初めての方でも読みやすい構成です。
利用上の注意
法律相談や診断書の解釈が必要な場合は、専門家に相談してください。本稿は一般的な情報提供を目的としています。
病気による退職届とは
定義
病気による退職届は、従業員が健康上の理由で退職する意志を会社に正式に伝える書面です。口頭で伝えるだけでなく、書面にすることで記録を残し、手続きややり取りを円滑にします。
どんなときに使うか
- 長期治療が必要で勤務継続が困難なとき
- 入院や手術で復帰見込みが立たないとき
- 医師から労働制限を受け、職務遂行が難しいとき
具体例:通勤困難な持病で通院が続く場合や、回復に数か月見込まれる手術を受ける場合などです。
提出のタイミングと期間について
通常は2週間〜1か月前の通知が望まれますが、病状によってはそれが難しいことがあります。急な入院や急性の症状で間に合わない場合は、できるだけ早く書面を提出し、事情を説明してください。
提出時の注意点
- 医師の診断書があると手続きがスムーズになります
- 経緯と退職希望日を明確に記載します
- 有給休暇や傷病手当金の申請についても確認してください
会社の対応
会社は事情を確認し、就業規則や労働契約に基づいて手続きを進めます。相談に応じて退職日を調整したり、休職制度の利用を提案することもあります。
退職届に記載すべき基本的な内容
以下は退職届に最低限記載すべき項目です。短く丁寧にまとめることが大切です。
作成日
文書を記録として残すために必ず記載します。提出日と混同しないように書き分けると良いです。例:2025年11月29日。すぐに退職する場合は、作成日の翌日を退職日として記載します(例:作成日が11月29日なら退職日は11月30日)。
氏名と連絡先
フルネームを署名・捺印とともに明記します。連絡先は退職後の確認や書類送付のために必要です。例:住所、携帯番号、メールアドレス。
退職予定日
最終出勤日や雇用契約上の退職日を明記します。会社が後任手配や引継ぎの準備をできるよう、可能なら具体的な最終勤務予定日を書きます。通知期間がある場合は契約に従って記載してください。
(任意で記載する項目)
- 宛先(会社名・部署名・上司名)
- 所属・役職
- 退職理由(簡潔に、詳細な診断名は別途相談)
- 署名・捺印
- 提出先と提出日
記載は簡潔かつ正確に。読みやすい日付と連絡先を心がけると、手続きがスムーズに進みます。
英語での退職届テンプレート
以下は、英語で退職届を作成する際の基本と例文です。本文は丁寧かつ簡潔にし、氏名・住所・連絡先、日付、受取人情報、退職の意思と最終出社予定日、理由(任意)、感謝の言葉、署名を含めます。
フォーマルなテンプレート
Date: [Month Day, Year]
To: [Recipient’s Name], [Title]
[Company Name]
[Company Address]
Dear [Recipient’s Name],
I hereby resign from my position as [Your Position] at [Company Name], effective [Last Working Day: Month Day, Year].
I appreciate the opportunities and support provided during my employment. I will do my best to complete pending tasks and assist with the transition.
Thank you for your understanding.
Sincerely,
[Your Signature]
[Your Printed Name]
[Your Address]
[Your Phone / Email]
簡易テンプレート(メール送付向け)
Subject: Resignation — [Your Name]
Dear [Recipient’s Name],
Please accept this email as notice of my resignation from [Company Name], with my last day on [Month Day, Year]. Thank you for the support during my time here. I will help ensure a smooth handover.
Best regards,
[Your Name]
[Contact]
書き方のポイント
- 日付は英語表記(Month Day, Year)にします。
- 最終出社日を明確に記載してください。
- 退職理由は詳述せず簡潔に触れるか省略して構いません。
- 署名は書面なら直筆、メールならタイプ名と連絡先を添えると丁寧です。
必要であれば、職種別や状況別の文例も作成します。ご希望を教えてください。
日本語での退職届の書き方
シンプル版(短めの記載例)
- 書き出しで宛先(会社名・部署・上司名)を明記します。
- 本文は「一身上の都合により退職します」と記載し、提出日と退職日を入れます。退職日は提出日から2週間以降に設定してください。
- 最後に氏名と捺印、日付を記載します。
例文:
(宛先)
私は一身上の都合により、20XX年○月○日をもって退職いたします。
(提出日)○○年○月○日 (氏名)
詳細版(体調不良を理由とする場合)
- 医師からの治療勧告や通院が必要である旨を簡潔に記載します。個人情報保護の観点から病名の記載は任意です。
- 会社への感謝と理解を求める一文を入れると丁寧です。
例文:
(宛先)
本人都合により退職を申し入れますが、医師から継続的な治療及び療養を要する旨の指示を受け、業務継続が困難であるため、20XX年○月○日をもって退職いたします。これまでのご厚情に深く感謝申し上げます。何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。
(提出日)○○年○月○日 (氏名)
書き方のポイント
- 簡潔に、丁寧な表現を使うこと。
- 提出時は控えを取ること。手渡しの際は上司に一言伝えると良いです。
- 診断書を添付する場合は別途その旨を明記すると親切です。
注意点
- 退職日が就業規則や雇用契約に触れないか確認してください。
- 病名を記載する場合はプライバシーに配慮し、必要最低限に留めてください。
病名の記載について
概要
病名の記載は状況によって異なります。業務に関連する病気や労災の疑いがある場合は、病名を明示することで手続きがスムーズになることがあります。一方で、精神的な病気や家族の事情などプライバシーに関わる内容は、無理に詳しく書く必要はありません。
記載が望ましいケース
- 業務起因と明らかに関係する病気(例:業務中の負傷や明らかな労災)
- 社会保険や労災手続きのために会社側が病名を必要とする場合
この場合は簡潔に病名と退職理由を記載するとよいです。
記載を避けるべきケース
- 精神疾患やプライベートな事情が深く関与する場合
- 公表すると差別や誤解を招く恐れがある場合
こうしたときは病名を書かずに「健康上の理由」「一身上の都合」とするのが一般的です。
記載の書き方例
- 病名を記載する場合:『慢性胃炎のため、療養に専念するため退職いたします。』
- 病名を記載しない場合:『健康上の理由により退職いたします。』
注意点
病名の開示は義務ではありませんが、会社から診断書の提出を求められることがあります。個人情報に配慮し、必要なら医師や産業保健スタッフに相談して判断してください。
退職願と退職届の違い
退職願と退職届は見た目は似ていますが、目的と効力で違いがあります。ここでは定義、利点・欠点、選び方、書き方の要点、提出時の注意点をわかりやすく説明します。
定義
- 退職願:会社に対する退職の申し入れです。会社と協議して受理されて初めて効力が生じます。話し合いの余地を残します。
- 退職届:退職の意思を正式に通知する書類です。提出することで効力を生じる場合が多く、手続きが明確になります。就業規則により扱いが異なることもあります。
メリット・デメリット
- 退職願のメリット:円満退職を目指せます。病気の事情で配慮を求めやすいです。デメリット:具体的事情を書くと心理的負担が増えます。
- 退職届のメリット:簡潔で手続きが早いです。私的事情を開示せずに済みます。デメリット:関係が悪い場合は摩擦になることがあります。
どちらを選ぶかの判断基準
会社と話し合って取り決めたい、配慮や就業調整を望む場合は退職願を先に出すと良いです。退職日を明確にして速やかに手続きを進めたい、私的事情を明かしたくない場合は退職届も選択肢になります。上司や人事との信頼関係、就業規則、健康状態を考慮してください。
書き方のポイント(簡潔に)
- 退職願:希望退職日、理由は簡潔に(例:「一身上の都合により、○年○月○日をもって退職いたしたく、お願い申し上げます。」)
- 退職届:退職の意思と日付、署名捺印を明記(例:「一身上の都合により、○年○月○日をもって退職いたします。」)
提出時の注意
事前に口頭で相談しておくと誤解が少なくなります。診断書や休職の履歴がある場合は添付や提出の準備をしておくとスムーズです。退職後の保険・年金手続きも忘れず確認してください。
提出時の重要なポイント
最終出社日の明記
退職届には最終出社日を必ず明記してください。例:「最終出社日 2025年6月30日」。具体的な日付を入れると、会社が引継ぎや人事手続きの準備を進めやすくなります。
記載する健康情報の範囲
病気に関する記載は、会社に伝えて差し支えない範囲にとどめてください。病名を詳しく書かなくても、療養のため退職する旨や業務継続が難しい旨を簡潔に伝えれば十分です。例:「治療を優先するため退職いたします」。
提出のタイミングと方法
可能な限り早めに提出しましょう。会社が代替人員や業務引継ぎを調整しやすくなります。提出方法は手渡しで受領印をもらうか、メールで送付した後に書面を郵送するなど、受領を確認できる手段を選んでください。
受領確認と控えの保管
提出後は受領の確認を必ず行い、受領印や受信メールの控えを保存します。トラブル回避のため、控えはコピーを1部自分で保管してください。
上司・人事への伝え方
先に口頭で上司や人事に事情を伝えてから書面を提出するとスムーズです。体調や今後の連絡方法についても合わせて相談してください。
診断書の提出
概要
医師の診断書を添付すると、退職の受理や病気による特別な対応がスムーズになります。特に体調不良が深刻な場合や長期治療が必要なときに有効です。
診断書が必要な理由
- 会社側が病状や休職の期間を把握できます。\
- 休職から退職へ移行する際の証拠になります。\
- 傷病手当金や労災などの手続きで求められる場合があります。
診断書に書かれる主な項目
- 医師の署名・医療機関名・発行日\
- 病名や治療内容(詳細は省略可能)\
- 就業不可期間や就労の可否の見込み\
- 入院や手術の予定があればその旨
提出のタイミングと方法
退職届と一緒に添付するのが一般的です。事前に口頭で相談し、コピーを取ってから原本を提出すると安心です。提出方法は持参・郵送・メール(PDF)など会社の指示に従いましょう。
診断書の取得と費用
主治医に依頼して発行してもらいます。窓口で依頼すれば数日内に用意してもらえることが多いです。費用は医療機関によりますが、保険適用外で数千円かかることがあります。
個人情報と記載範囲の配慮
病名の詳細を記載したくない場合は、医師に「就業不可期間のみ記載してください」と依頼できます。医師の診断書は個人情報ですから、提出先や保管方法に注意してください。
会社への添え状の例(短文)
「別紙診断書を添付のうえ、退職手続きをお願い申し上げます。原本は確認後、返却いただけますと幸いです。」
注意点
原本は保管しておき、コピーを会社に渡すようにしましょう。会社から追加説明を求められた場合は、主治医や相談窓口に相談してください。
相談先
退職を迷うときや手続きが不安なときは、専門の窓口に相談すると安心です。以下を参考に、まずは気軽に相談してみてください。
労働基準監督署
労働条件や退職の扱い、未払い賃金などの相談を受け付けます。無料で相談できます。都道府県労働局一覧から最寄りの労働局・監督署を探せます。相談時は診断書、雇用契約書、給与明細、やり取りの記録(メール等)を用意してください。
労働組合
会社との交渉や手続きの代理を頼めます。個別相談や匿名相談を受けるところもあります。組合の有無で対応の仕方が変わるため、まず相談してみるとよいです。
都道府県労働局・労働相談コーナー
専門の相談窓口があり、法律や手続きについて丁寧に教えてくれます。電話や窓口、WEBでの予約が可能です。
その他の相談先
社会保険労務士、産業医、健康保険組合、市区町村の福祉窓口なども利用できます。病気休職や傷病手当金の手続きは健康保険窓口で確認してください。
相談の際に心がけること
相談前に必要書類を準備し、相談内容と希望する結果を整理して伝えてください。相談記録は必ず残すと後で役に立ちます。
まとめ
病気による退職届は、退職の意思を正式に伝える大切な書類です。基本は「一身上の都合」で問題ありませんが、会社との信頼関係や病気の性質に応じて詳しく書く選択もあります。正直に伝えつつプライバシーを守り、円満に進めることを心がけてください。
実務的なチェックリスト:
– 主旨を明確に:退職日と理由(簡潔に)を記載します。
– 病名の扱い:記載しない場合は「健康上の理由」で十分です。詳しく伝えたいときは一言添えてください。
– 診断書:添付すると正当性が高まります。提出先やコピーを確認してください。
– 引継ぎと手続き:業務の引継ぎ予定や有給消化について、上司と調整します。
– 文書の保管:提出日を記録し、控えを保管します。
何よりもご自身の健康を最優先にしてください。必要なら医師や労務担当へ相談し、無理のない形で退職手続きを進めてください。


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