はじめに
本書の目的
この資料は、懲戒解雇を受けたときに「失業保険がもらえるか」「いつから・いくら受給できるか」を分かりやすく解説します。手続きの流れやハローワークでの実務、会社側が行う手続きまで具体例を交えて説明します。初めての方でも手順が追えるようにしています。
誰に向いているか
懲戒解雇を受けた本人はもちろん、家族や支援する人事担当者、相談窓口の方にも役立ちます。実務で必要な手続きや注意点を押さえたい方に向けた実用的な内容です。
読み方のポイント
以降の章で「受給要件」「給付制限」「ハローワークでの流れ」「会社側の手続き」を順に説明します。まずは自分のケースがどのタイプに当たるかを確認し、該当章を参照してください。具体的な書類や日程例も後の章で示します。
懲戒解雇でも失業保険はもらえる!いつから・いくらの金額かを解説
概要
懲戒解雇された場合でも、条件を満たせば失業保険(基本手当)は受け取れます。ただし扱いが通常の解雇と異なり、給付の開始時期や制限が変わることがあります。
受給できるかの基本要件
原則として①雇用保険に所定期間加入している、②すぐに就職する意思と能力がある、という点が必要です。懲戒解雇そのものが自動的に不支給になるわけではありません。
いつからもらえるか(待期と給付制限)
まず7日間の待期があります。懲戒解雇の事情により、自己都合退職と同じ扱いで3か月程度の給付制限が付くことがあります。判断はハローワークが行いますので、離職票や事情説明が重要です。
いくらもらえるか(計算の考え方)
基本手当日額は「賃金日額×給付率」で決まります。賃金日額は解雇前6か月の給与合計÷180で求めます。給付率は賃金によって変わり、おおむね45%〜80%程度です。例:月30万円なら賃金日額は約10,000円、給付率50%なら日額約5,000円です。
手続きと注意点
離職票を受け取りハローワークで求職申込みと受給手続きを行ってください。懲戒内容に争いがある場合は会社の証明書類や説明を用意し、必要なら労働相談窓口や弁護士に相談してください。ハローワークでの説明を正確に行うことが早期受給につながります。
失業保険の受給要件の違い
概要
懲戒解雇は大きく「重責解雇」と「重責に該当しない懲戒解雇」の2つに分かれます。扱いが変わるため、失業保険の受給要件も異なります。
重責解雇(重大な規律違反など)
- 例:横領・重大な情報漏えい・故意の勤務怠慢など、会社が即時解雇の相当性を認める行為。
- 受給要件:離職前2年間に被保険者期間が合計12か月以上必要です(自己都合退職と同様)。
- 給付の開始:原則として3か月の給付制限があります。つまり申請しても給付が3か月間止まります。
重責に該当しない懲戒解雇
- 例:職務上のミスが重大とは認められない場合や、懲戒の程度が過剰と判断される場合。
- 受給要件:離職前1年間に被保険者期間が6か月以上あれば申請できます(会社都合退職と同様)。
- 給付の開始:給付制限は通常かかりません。すぐに受給手続きに進めます。
判断と対応のポイント
- 最終判断はハローワークが行います。会社の解雇理由と本人の事情、就業規則や始末書などの資料で判断します。
- 不利になる場合は、出勤簿・メール・証拠書類を用意して説明してください。
- 判断に納得できないときはハローワークで相談し、不服申立ての手続きも確認しましょう。
給付制限期間
概要
懲戒や重責解雇など、自己に重大な非があると判断された場合、失業保険の支給はすぐに始まりません。まず7日間の「待期期間」があり、その後さらに3か月程度の「給付制限期間」が設けられることがあります。この間は失業手当が支払われないため、受給開始まで最大で約3か月の遅れが生じます。
具体的な流れ(例)
- 退職日を1日目として、ハローワークで求職の申込みを行います。
- 申込み後に7日間の待期期間が始まります。
- 待期終了後、給付制限が適用されるとさらに約3か月の期間が続きます。
例:退職日が4月1日なら、待期が4月1日〜4月7日、その後の給付制限は4月8日〜7月7日頃(概算)で、この間は手当の支給がありません。
給付制限中にできること
給付が止まっていても、求職活動は続けられます。ハローワークでの職業相談や職業紹介、セミナー受講は可能です。面接や就職試験を受けて内定を得れば、就職日を早めて収入を得る選択もできます。
注意点と実務的な対処法
- 給付が遅れる理由や期間については、ハローワークで必ず確認してください。
- 書類や離職票は早めに準備して持参しましょう。
- 給付開始までの生活資金を見直し、必要なら家族や福祉制度の相談も検討してください。
給付制限は受給額を減らすものではなく、支給の開始を遅らせる措置です。早めにハローワークへ相談し、手続きと求職活動を積極的に進めることをおすすめします。
ハローワークでの手続きフロー
はじめに
懲戒解雇後でも失業保険を受け取るには、ハローワークで所定の手続きを行います。ここでは実際の流れと注意点をわかりやすく説明します。
必要書類
- 離職票(事業主から受け取る)
- 雇用保険被保険者証
- 本人確認書類(運転免許証など)
- 預金通帳またはキャッシュカード
- 印鑑
- マイナンバー確認書類(通知カードや個人番号カード)
手続きの流れ
- 離職票と必要書類をそろえる。会社から離職票が届かない場合は確認を。
- ハローワークで求職の申し込みをする。求職申込書に希望条件を記入し、離職票を提出します。
- 雇用保険受給者説明会に参加する。受給手続きや求職活動の方法を説明します。
- 失業の認定を受ける。原則として4週間に1回、認定日に求職活動の状況を報告します。認定日を忘れないよう注意してください。
- 受給開始。認定後、おおむね1週間程度で指定口座に振り込まれます。
注意点・実務的なコツ
- 認定日には求職活動実績が必要です。応募メールや面接の記録を残してください。
- 離職票に不備があれば会社に連絡し、ハローワークにも相談しましょう。
- 手続きは早めに行うと安心です。時間に余裕を持って準備してください。
会社側の手続き
重要な前提
従業員が離職票の交付を希望した場合、会社は「雇用保険被保険者離職証明書」を作成してハローワークに提出する義務があります。懲戒解雇でもこの手続きは同様です。
手続きの流れ(例)
- 従業員が離職票を希望する旨を伝える
- 会社が離職証明書を作成し、離職理由を明記する
- 会社が署名・押印してハローワークへ提出
- ハローワークが離職票を発行し、従業員へ交付する
記載のポイント
- 離職理由は事実に基づき具体的に記載します(例:無断欠勤が続いた、業務上の重大な不正行為)。
- 懲戒解雇の中でも「重責解雇」に該当する場合は、その旨を明記します。具体例を添えると誤解が少なくなります。
提出と保存
ハローワークへの提出は速やかに行い、会社は控えを保存してください。従業員と意見が対立する場合に備え、当時の事実(出勤記録や調査報告書)を整理しておくと安心です。
実務上の注意点
- 記載内容が不明確だとハローワークから照会が来ることがあります。
- 労働法や就業規則に基づく手続きが適正か、労務担当や弁護士に相談しておくとトラブルを防げます。
以上が会社側が行う主な手続きの流れと注意点です。
ブログ記事としてのまとめ
この記事のポイントを分かりやすく整理します。
要点
- 懲戒解雇でも失業保険は受け取れる場合があります。懲戒の内容によって受給の条件や待期(給付制限)が変わります。
- 「重責解雇」に該当しない場合は、会社都合退職と同様に有利な条件で申請できることが多いです。具体例:業務上のミスで過度な処分を受けた場合など、事情を説明できれば扱いが変わる可能性があります。
- ハローワークでは、退職理由や書類の提出順を守ることが重要です。自己都合か会社都合かで給付開始や金額が変わります。
実務的な注意点
- 退職届や注意書き、やり取りの記録は必ず保管してください。
- 不安な場合はハローワークや労働相談窓口に早めに相談しましょう。
- 申請の期限や必要書類を確認して、手続きを滞りなく進めてください。
最後に、冷静に事実を整理し、適切な手続きを踏むことが受給の近道です。応援しています。


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