はじめに
本レポートの目的
本レポートは、退職理由の作り方と伝え方を実践的に支援することを目的としています。統計や実例をもとに、説得力があり誠実な表現を紹介します。
対象となる方
転職活動中の方、退職届や面接で理由をまとめたい方、人事や採用担当の方にも参考になる内容を想定しています。
本書の構成と使い方
第2章で統計データと実態を示し、第3章で本音と建前の使い分けを解説します。第4章は具体例文集、第5章は面接での言い換えテクニック、第6章は精神的理由の伝え方です。状況に合わせて章を選んでお読みください。
注意点
事実に基づき誠実に伝えることを第一にしてください。面接では相手に配慮した表現を心がけると印象が良くなります。
退職理由の統計データと実態
統計の要点
男性の正規雇用者で多い退職理由は、給与・報酬が少なかった(40.7%)、会社の将来に不安を感じた(31.7%)、労働時間が長かった・休暇が少なかった(30.9%)です。女性では会社の経営方針に不満(32.3%)、給与・報酬が少なかった(30.6%)、労働時間が長かった・休暇が少なかった(29.0%)が上位に挙がります。
男女で見られる違い
男性は「報酬」と「将来への不安」がより強く出ています。女性は「経営方針への不満」が目立ち、職場の方針や風土が退職に直結する傾向が見られます。労働時間や休暇に関する不満は男女とも高く、働き方の問題が共通課題です。
実務での使い方
これらの統計は説得力ある具体例になります。面接や退職理由書で用いるときは、該当する項目と自分の状況を簡潔に結び付けます。たとえば「給与水準が業界平均に比べて低く、生活設計が難しかったため」といった具体性のある説明が有効です。したがって、数字を根拠にしながらも感情的にならず、次に何を求めるかを示すと印象が良くなります。
注意点
統計は参考情報です。個別事情(人間関係や健康問題など)は正直に説明する必要がある場合もありますが、攻撃的な表現は避けてください。企業側が詳しい事情を求める場合は、事実を簡潔に伝えつつ、前向きな理由に言い換える準備をしておきましょう。
退職理由の本音と建前の使い分け
はじめに
退職理由には「本音」と「建前」があります。面接や退職の場では相手に不快感を与えない配慮が必要です。ここでは代表的な本音と、それをどう建前に言い換えるかを分かりやすく説明します。
本音に多い理由(代表例と一言説明)
- 人間関係のストレス:職場の人間関係が原因で精神的に疲れた
- 給料が低い:生活や能力に見合わないと感じた
- 長時間労働:休めず健康や家庭生活に影響が出た
- 仕事内容の不適合:自分の適性や興味と合わなかった
- 評価されない:努力が正当に評価されなかった
- 社風が合わない:価値観や働き方が合わなかった
- キャリアの不安:将来の成長やスキル獲得に不安があった
面接や退職届での建前の言い換え例
- 人間関係→「組織でより良く働ける環境を求めたいと感じました」
- 給料→「待遇と今後の成長機会を総合的に検討した結果です」
- 長時間労働→「ワークライフバランスを整え、持続的に働きたいと考えました」
- 仕事内容→「自分の強みを活かせる業務に挑戦したいと考えています」
伝え方のポイント
- 短く具体的に伝える
- 感情的な非難は避ける
- 感謝を必ず添える(学んだことや機会への言及)
- 事実ベースで話す(数字や期間など)
- 面接では未来志向を強調する
しかし、虚偽は避けるべきです。正直さと配慮のバランスを意識して伝えましょう。
具体的な退職理由の例文集
以下では代表的な退職理由について、使いやすい例文と伝え方のポイントを示します。状況に合わせて言い回しを調整してください。
1) 資格取得・スキルアップ
- 例文(退職願・書面)
「××資格取得のため勉強時間を確保したく、退職をお願い申し上げます。これまでの経験を今後も生かして参ります。」 - 例文(面接での説明)
「専門性を高めるために○○資格を取得したく、一定期間学習に専念したいと考えています。御社での経験は大変役立ちました。」 - ポイント:資格名や目標時期を明示すると説得力が増します。
2) 家庭の事情
- 例文(退職願)
「家庭の事情によりやむを得ず退職いたします。円滑に引継ぎを行う所存ですので、何卒ご了承くださいますようお願い申し上げます。」 - 例文(面接)
「親の介護等、家庭の状況に対応する必要が生じたため退職しました。可能な範囲で勤務を続けたい旨も検討しましたが難しいため決断しました。」 - ポイント:詳細を話しすぎず、必要な範囲で説明します。
3) 体調不良
- 例文(退職願)
「持病の悪化により業務継続が困難となったため、退職を申し出ます。医師の診断書を提出いたします。」 - 例文(面接)
「通院や治療が必要で安定した勤務が難しくなったため、一時的に退職しました。現在は改善に向けて治療中です。」 - ポイント:診断書や治療状況を示すと信頼性が高まります。しかし詳細すぎる説明は避けて結構です。
4) 結婚・配偶者の転勤
- 例文(退職願)
「結婚に伴う引越し(配偶者の転勤)により、通勤が困難となるため退職いたします。引継ぎは責任を持って行います。」 - 例文(面接)
「家庭の事情により退職しましたが、勤務地が変わるため長期で勤務可能です。」 - ポイント:予定の時期や居住地の変更を明確に伝えると安心感を与えます。
面接での退職理由の言い換え表現テクニック
ポイントの整理
ネガティブな理由をそのまま話すと印象を悪くします。言い換えで「自分の志向」や「前向きな動機」に変えると説得力が出ます。事実は隠さず、表現を前向きに変えることが大切です。
よくある例と言い換え例
- 給与が低い → 「スキルを高められる環境で成長したい」
- 人間関係が合わない → 「協力して成果を出せるチームで働きたい」
- 長時間労働 → 「メリハリをつけて効率的に働ける職場を希望」
- 仕事内容が合わない → 「自分の強みを活かせる業務に挑戦したい」
- キャリアの停滞 → 「より裁量のある役割で貢献したい」
面接での言い方のコツ
- 事実を簡潔に述べる(1文)→その後に前向きな理由を述べる。例:「前職では専門性を伸ばす機会が限られていたため、御社で新しい分野に挑戦したいです。」
- 感情的な批判は避ける。個人や会社を非難しない表現にする。
- 具体的な希望と結びつけると説得力が増します。
禁止事項とおすすめ表現
- NG: “上司が最悪で…” → OK: “より開かれたコミュニケーションの職場を求めています。”
短いテンプレート
「前職では○○の経験を積みましたが、より△△に挑戦したく転職を決めました。御社では□□を通じて貢献したいと考えています。」
面接では冷静に、前向きな姿勢を示すことが最も重要です。
精神的な理由による退職の伝え方
概要
心身の不調で退職する場合、病名や症状を詳しく述べる必要はありません。『心身のバランスを崩した』『体調不良が続いた』といった表現で十分です。過度に詳細を話すと採用側に不安を与えることがあるため、適切な距離感を保って説明します。
伝え方の基本
- 短く、誠実に伝える:事実と要点を伝えます。
- 再発予防や療養の必要性を簡潔に示す:早期復帰や改善に努めている旨を添えると安心感が出ます。
面接や辞意表明での受け答え
- 具体的な診断名は控える
- 詳しい質問には「差し支えがあるため控えますが、療養が必要でした」と答える
- 今後の働き方(フルタイム可か、配慮が必要か)は正直に伝える
診断書や書類について
- 採用側から求められれば、医師の意見書の要旨を提出する程度で十分です。
- 個人情報は慎重に扱います。
例文(短め)
- 退職理由(口頭):「体調面の回復に専念するため、退職を決意しました。」
- 面接での一言:「以前、心身のバランスを崩した時期があり療養しました。現在は回復傾向にあり、無理のない勤務を希望します。」
配慮を求める場合は具体的な希望(勤務時間や業務範囲)を示すと話が進みます。相手の不安を和らげつつ、自分の健康を最優先に伝えてください。


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