はじめに
本資料は、懲戒解雇と行政官庁(所轄の労働基準監督署長)が関わる「解雇予告除外認定」についてわかりやすく整理したものです。
目的
- 懲戒解雇そのものが行政の許可を必要としない点と、解雇予告や予告手当を免れるためには監督署長の認定が必要になる点を明確にします。
この資料で扱うこと
- 解雇予告除外認定の法的な位置づけ、認定を受ける手続き、要件、関連する判例、実務上のリスクを順を追って解説します。
想定読者
- 企業の人事担当者、経営者、労働者、法律実務家など、解雇や懲戒処分に関わる方々を想定しています。
簡単なイメージ
- 例えば、重大な横領があった場合、企業は即時に懲戒解雇を行えますが、解雇予告や予告手当を不要にするには監督署長の認定が必要です。認定が得られないと、あとで支払いを求められるリスクがあります。
本章では全体像を示しました。次章以降で具体的な制度や要件、実務上の注意点を丁寧に説明します。
懲戒解雇と「行政官庁の認定」は何の話か
概要
懲戒解雇は、会社が就業規則に基づいて行う懲戒処分の一つです。事前に行政の許可は不要で、会社は問題行為の重大さに応じて懲戒解雇を決められます。ただし、解雇一般には「少なくとも30日前の解雇予告」か「30日分の解雇予告手当」の支払いが必要です。これを免れるには労働基準法19条2項に基づく行政官庁の認定が必要になります。
行政官庁とは何か
ここでいう行政官庁とは、所轄の労働基準監督署長を指します。企業は「解雇予告除外認定申請書」を労働基準監督署に提出し、監督署長が認定することで予告手当の支払い義務を免れることができます。
認定の意味と効果
認定は「解雇予告を省略してもよい」という手続上の免除です。つまり、認定があれば直ちに解雇でき、30日分の手当を払う必要がありません。重要なのは、認定の有無が懲戒解雇の”正当性”そのものを自動的に保証するわけではない点です。裁判や労使紛争で解雇の妥当性が問われることは引き続きありえます。
具体例と実務上の注意点
- 具体例: 従業員の横領や暴力行為など、会社の信頼関係が即座に破壊される場合、認定が得られる可能性が高くなります。
- 証拠の準備: 事実関係を示す書類や調査記録を整えておくことが重要です。
- 手続きのタイミング: 認定は申請が必要なので、解雇予告を出さない場合は速やかに申請手続きを行ってください。
- リスク管理: 認定が下りても、解雇の合理性・必要性が争われることがある点を念頭に、就業規則や懲戒手続を適正に進めることが大切です。
以上が、懲戒解雇と行政官庁の認定に関する基本的な説明です。次章では、解雇予告除外認定の制度の具体的な中身を見ていきます。
解雇予告除外認定とは何か(制度の概要)
制度の趣旨
解雇予告除外認定は、労働基準法の規定に基づき、労働基準監督署長が事前に認定すると、使用者が労働者を即時に解雇しても30日間の予告や解雇予告手当の支払を免れることができる制度です(労働基準法19条2項・20条3項)。主に重大な責めに帰する事情がある場合に適用されます。
対象と効果
この認定は懲戒解雇・普通解雇を問いません。認定があれば、通常必要な30日前の予告やその代替としての解雇予告手当の支払義務が免除され、使用者は即時解雇できます。一方、認定を受けていない場合に予告や手当を怠ると、不履行として行政指導や労働者からの金銭請求などのリスクが生じます。
申請の流れと実務上の注意
使用者は解雇予定の前に監督署長へ申請し、事実関係や証拠(懲戒理由、調査記録、被害の状況など)を提出します。監督署は事情を実地確認し判断します。重要なのは、証拠を整理して説明できることと、手続きが事前であることです。認定が下りなければ、速やかに予告手当を支払う必要があります。
具体例(簡単)
横領・業務上の重大な背信行為・暴力行為など、会社経営に重大な支障を与える場合に認定されやすい傾向があります。ただし、個別事情で判断が分かれるため、申請時に丁寧な資料準備が求められます。
解雇予告除外認定が必要となる場面と懲戒解雇
いつ除外認定が必要になるか
懲戒解雇を行うとき、原則として会社は30日前に解雇予告をするか、30日分の平均賃金を支払います。従業員の行為が極めて悪質で、即時解雇が社会的に相当だと判断される場合に限り、労働基準監督署長の「解雇予告除外認定」を受ければ予告や手当を不要にできます。たとえば、横領や重大な暴力、不正行為による会社の著しい損害などが該当します。
懲戒解雇との関係
懲戒解雇は最も重い処分であり、就業規則の懲戒事由に該当し、社会通念上相当である必要があります。除外認定は「予告手当を不要にする」行政の判断であり、懲戒処分そのものの正当性を保証するものではありません。つまり、除外認定があっても懲戒解雇が不当とされる場合があります。
実務上の判断と注意点
実務では、証拠が十分でないと争いになりやすいため、懲戒解雇でも解雇予告手当を支払って処理するケースが多いです。また、懲戒前に社内調査や本人聴取を丁寧に行い、記録を残すことが重要です。除外認定を受けるには労基署に事情を説明するため、刑事事件化や被害の有無、被害額の明確さが評価に影響します。
具体例(イメージ)
- 会社の金銭を繰り返し横領した場合:即時解雇と除外認定の申請が想定されます。
- 営業秘密を競合に提供した場合:会社の信頼と利益が著しく損なわれれば除外の対象になり得ます。
- 出勤中の暴力事件:安全確保の観点から即時解雇が検討されますが、手続きと証拠が重要です。
まとめ的助言(手続きの流れ)
1) 事実確認と証拠収集 2) 就業規則に基づく懲戒手続き 3) 必要であれば労基署長へ除外認定を申請 4) 訴訟リスクを見越して社内外の相談を行う
慎重な調査と記録、必要時の除外認定申請が、後の紛争を避けるために大切です。
除外認定の法律上の要件(2つの柱)
以下では、行政の「解雇予告除外認定」で問題となる2つの法律上の柱を、具体例を交えてやさしく説明します。
1.天災事変その他やむを得ない事由
事業の継続が物理的に不可能になった場合を指します。具体例は火災や震災で事業場が焼失・倒壊したケース、行政による強制収用や差押えで設備や資産が使えなくなった場合などです。ここで重要なのは「事業を続けられないこと」が直ちに証明できる点です。被害報告書、警察・消防・自治体の文書、写真や修復見積もりなど具体的な証拠を用意してください。単なる業績不振や一時的な資金繰りの悪化では認められません。
2.労働者の責に帰すべき事由に基づく解雇
労働者側の重大な違反や責任が原因で解雇する場合です。盗難・重大な安全違反・長期無断欠勤などが典型例です。ここで問われるのは、行為の重大性と解雇の相当性です。必要な手続(事実確認、弁明機会の付与、始末書や懲戒歴の記録など)を踏んでいることが求められます。軽微なミスや初回の過失だけで即時除外を主張すると認められにくいです。
立証責任と実務上の注意点
行政や裁判所は、除外を認めるか慎重に判断します。除外認定を得るための立証責任は使用者側にあります。できるだけ早く関係書類を整え、事情説明を記録してください。可能なら労働基準監督署などに事前相談すると対応が明確になります。


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