はじめに
本資料の目的
本資料は、退職日と雇用保険の資格喪失日の違いをわかりやすく説明します。両者が混同されやすいため、手続きや社会保険料の計算に与える影響を具体例を交えて示します。
基本的な考え方
退職日とは、雇用契約が正式に終わる日です。最後の出勤日や最終給与の支給日と一致することが多いです。一方、資格喪失日とは、雇用保険の被保険者としての資格を失う日を指します。一般に、資格喪失日は退職日の翌日になります。
なぜ区別が必要か
この違いは、失業給付の開始時期や社会保険料の計算に影響します。例えば、12月31日を退職日とした場合、資格喪失日は1月1日となり、保険の加入状況や掛金の負担区分が変わります。
本資料の構成
次章以降で、定義の詳細、雇用保険手続きの期限、被保険者期間の計算方法などを順を追って説明します。分かりやすい例を使いながら進めますので、ご安心ください。
退職日と離職年月日の定義
定義
退職日(離職年月日)は、雇用契約が正式に終了する日を指します。従業員が会社に籍を置く最終日が退職日です。実際に出勤したかどうかに関係なく、契約が続いている期間の最終日が退職日になります。
よくある例
- 有給休暇を消化する場合
例:最終出勤日が6月10日で、その後6月11日から6月20日まで有給を使うと、6月20日が退職日になります。 - 事前に退職届を出した場合
退職届の提出日と退職日は異なることが多いです。提出日は手続きの日で、退職日は契約終了日を指します。
注意点
- 出勤実績がない期間でも雇用契約が有効なら退職日は続きます。
- 勤怠や給与計算、保険手続きでは退職日が基準になりますので、会社と確認してください。
以上が退職日(離職年月日)の基本的な定義と具体例です。ご不明点があれば、具体的な状況を教えてください。
雇用保険の資格喪失日との違い
定義と基本
退職日(離職年月日)は会社を実際に辞めた日です。一方、雇用保険の資格喪失日とは被保険者(雇用保険の加入者)としての資格を失う日で、原則として退職日の翌日になります。
具体例で理解する
例えば最終出勤日が3月31日なら、離職年月日は3月31日です。雇用保険の資格喪失日は4月1日になります。雇用保険の加入状態は3月31日まで続き、4月1日から被保険者ではなくなります。
なぜ違いが重要か
資格喪失日は失業給付などの受給資格や受給期間の計算に使います。離職票には離職年月日が記載されますが、受給手続きでは資格喪失日が基準になる点に注意してください。
実務上の注意点
会社が手続きを間違えると給付に影響することがあります。離職票の記載と雇用保険の資格喪失日が一致しているか、ハローワークで確認することをおすすめします。
社会保険料の計算への影響
概要
退職日によって社会保険料の負担月が変わります。月末に退職した場合は資格喪失日が翌月の初日となり、その月の保険料負担が発生します。月末以外に退職した場合は資格喪失日が翌日で、退職月の保険料負担は基本的に発生しません。退職日が平日か休日かで扱いは変わりません。
具体例
- 例1:6月30日に退職した場合
資格喪失日が7月1日となり、7月分の保険料を負担することになります(給与からの控除や事業主負担の扱いは最終精算で調整します)。 - 例2:6月15日に退職した場合
資格喪失日が6月16日となり、6月分の保険料負担は通常発生しません。
実務上の注意点
- 最終給与明細でどの月の保険料が差し引かれるかを確認してください。
- 健康保険証や年金の加入状況は資格喪失日で確定します。手続きは事業主が行うため、不明点は人事・総務に相談してください。
よくある誤解
退職日が休日でも保険料の扱いは同じです。月をまたぐ退職かどうかで判断します。
雇用保険被保険者資格喪失届の提出手続き
概要
会社は、従業員が退職した場合、退職日の翌日から起算して10日以内に「雇用保険被保険者資格喪失届」をハローワークに提出する義務があります。この届出は行政に被保険者でなくなった事実を伝える書類です。
誰が提出するか
事業主(会社)が提出します。委託契約があれば社労士など代理人が行えますが、最終的な責任は事業主にあります。
提出方法と必要書類(具体例)
- 提出方法:ハローワーク窓口持参、郵送、事業所のオンライン手続き(利用可の場合)。
- 必要書類:雇用保険被保険者資格喪失届(所定様式)、被保険者番号または雇用保険被保険者証、退職日を確認できる書類(離職票や退職届の写し)。
例:退職日が3月31日の場合、4月1日から数えて10日以内(4月10日まで)に届出を出します。
提出時の注意点(チェックリスト)
- 被保険者番号を正しく記入する
- 退職理由(自己都合・会社都合)を明確にする
- 提出日と控えを必ず保管する(受領印か郵便の追跡記録)
- 代理提出の場合は委任状を用意する
遅延した場合の影響と対応
届出が遅れると、退職者の失業給付手続きに時間がかかったり、給付開始が遅れる可能性があります。提出漏れに気づいたら速やかに提出し、状況を退職者に説明して控えを提示できるようにしてください。
被保険者期間の計算
基本の考え方
被保険者期間は「賃金が支払われる日」が対象です。出勤した日だけでなく、有給休暇や欠勤でも賃金が支払われていれば期間に含まれます。逆に賃金が支払われない日や無給の休職期間は原則、被保険者期間に入りません。
具体例で見る
- 有給休暇を消化している期間:給与が通常どおり支払われれば被保険者期間に含まれます。\
- 病気による欠勤で傷病手当金ではなく給与が支払われる場合:その期間も被保険者期間に含まれます。\
- 無給の育児・介護休業:賃金が支払われなければ被保険者期間には入りません。
資格喪失日が遅れる場合
退職後に会社が未消化の有休や報酬を支払うと、賃金支払いの対象日が退職日より後になることがあります。その場合、実務上は賃金の支払われる最終日までを被保険者期間と見なすため、資格喪失日が遅れることがあります。
実務上の確認ポイント
- 給与明細や退職時の精算書で支払日を確認してください。\
- 人事・総務に「被保険者期間に含まれるか」を確認してください。\
- 不明な点は社会保険事務所や年金事務所に相談すると確実です。
日付や支払いの扱いで判断が変わりますので、書類で確認することをおすすめします。
社会保険喪失手続き
手続きの期限と流れ
退職後5日以内に事業主が健康保険と厚生年金の資格喪失手続きを行います。資格喪失日は退職日の翌日です。会社は所定の書類で年金事務所や健康保険組合に届出します。
事業主の役割
会社は被保険者資格喪失届を提出し、保険料の計算と給与からの控除処理を行います。従業員は原則、自分で手続きする必要はありませんが、任意継続や国民年金への加入を希望する場合は自ら手続きを進めます。
従業員の選択肢
- 健康保険:任意継続被保険者制度を使う、または市区町村の国民健康保険へ加入します。期限や条件が異なるため早めに確認してください。
- 年金:会社の厚生年金が外れるため、国民年金への切替えなど手続きが必要です。
必要書類(主な例)
- 被保険者資格喪失届(会社提出)
- 離職票や退職証明(従業員が保存・提示用)
給与控除と計算例
社会保険料は会社と従業員が折半で負担します。保険料は月割りで計算され、退職日翌日を含む月の前月分までが給与から控除されます。例:退職日が1月20日なら資格喪失日は1月21日で、1月21日を含む月は1月、その前月分(12月分)が給与から控除されます。
注意点
退職後の保険切替えは期間や手続き先が異なります。疑問があれば会社の総務か年金事務所、市区町村窓口に早めに相談してください。


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