はじめに
退職代行ユニオンは、労働組合法に基づいて設立された労働組合が運営する退職支援サービスです。個人が直接会社とやり取りせずに、組合が代わって退職手続きを進める仕組みを提供します。
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背景
労働組合には法律で認められた団体交渉権があります。この権利により、組合は使用者(会社)と労働条件や退職に関する交渉を行えます。退職代行ユニオンはこの権利を使って、利用者の意思に基づき会社と連絡や調整を行います。 -
なぜ違法ではないのか
組合が団体交渉をすること自体は法律で保障されています。組合が退職の申し入れや条件確認を代行する行為は、組合活動の一環として正当な手続きです。暴力や不法侵入といった違法行為を伴わない限り、サービス自体が法に反するものではありません。 -
利用のイメージ(具体例)
- 利用者が組合に退職の意思を伝える。 2. 組合が会社に退職の意思と手続きの希望を連絡する。 3. 必要なら団体交渉で退職日や未払賃金の確認を行い、合意内容を文書化する。
この章では、退職代行ユニオンの位置づけと法的な基盤をやさしく説明しました。次章で、違法性のポイントを詳しく見ていきます。
違法性のポイント
概要
弁護士資格を持たない民間業者が退職条件の交渉や金銭請求を代行すると、弁護士法上の非弁行為に当たり違法となります。具体的には相手方に対して支払いを求める文書を送る、金銭の受領を仲介する、賠償を請求して和解を成立させる行為などが問題になります。
労働組合との違い
労働組合は団体交渉権を持つため、組合員の代表として使用者と交渉できます。たとえば「退職代行ユニオン」のように実態が組合であれば、組合の権限で交渉を行い、非弁行為には該当しません。
実務上の注意(具体例)
- 名称だけ「ユニオン」「組合」と名乗る民間会社が交渉するとリスクが高いです。実際に組合としての手続きや会員名簿、総会の記録があるか確認してください。
- 企業が本人になりすまして金銭を受け取ると違法です。交渉で金銭のやり取りや示談金の受領を求められたら弁護士に相談しましょう。
判断のポイント
組合としての実態(会員の存在・総会・規約)と、行為の内容(単なる連絡か金銭請求か)で違法性が分かれます。疑わしい場合は弁護士や自治体の相談窓口で確認してください。
注意点
見分けるポイント
運営者が株式会社や合同会社など営利の会社名義になっている場合は注意してください。具体例として「有料プランに加入しないと相談できない」「入会金や事務手数料を別途請求する」といった仕組みがあると、組合の趣旨と整合しないことがあります。運営者の所在地や代表者名、利用規約を確認し、団体の目的が明確かを確かめましょう。
よくあるトラブル例
- サービス内容と実際の対応に差がある:案内では交渉や支援を謳っていたのに、実際は紹介だけで終わる。
- 追加料金の請求:説明になかった手数料や成功報酬を後から求められる。
- 個人情報の取り扱い不備:同意なく外部に情報を提供されたり、勧誘に使われたりする。
これらは証拠(メールや画面のスクリーンショット)があれば対処しやすくなります。
具体的な対処法と相談先
- 支払い前に契約内容を文書で確認し、疑問点は書面で質問してください。2. 不当な請求を受けたら領収書ややり取りを保存し、まず運営に説明を求めましょう。3. 自力で解決できない場合は消費生活センターや労働相談窓口に相談してください。緊急性が高ければ弁護士に相談することも検討してください。
利用前のチェック項目
- 運営の法人格と代表者が明記されているか
- 料金体系が明確で後から請求されないか
- 無料相談の範囲と有料サービスの違いが説明されているか
- 口コミや第三者の評価を確認すること
運営が営利企業だからといって必ずしも問題とは限りませんが、説明と実際の対応に差がある場合は慎重に行動してください。証拠を残し、必要なら専門窓口に相談することをおすすめします。
まとめ
要点の整理
退職代行ユニオンは、正規の労働組合が運営している場合、違法ではありません。運営元が労働組合であれば、組合として会社とやり取りや交渉を行うことが認められるからです。一方で、民間の業者が会社との交渉や金銭の請求・回収を代行する行為は違法となる可能性が高い点に注意してください。
利用前に必ず確認すること(チェックリスト)
- 運営団体の種類:労働組合か法人(株式会社など)かを確認する。
- 連絡先・所在地:実在する住所や連絡先が明示されているかを見る。
- サービス内容:連絡代行のみか、交渉や金銭請求を行うかを確認する。
- 契約書・料金の明示:費用やキャンセル規定が書面で示されているか。
- 実績や口コミ:過去の事例や利用者の声を参考にする。
問題が起きたときの対処
疑問や不安があれば、まず労働相談窓口や弁護士に相談してください。運営元に不審な点がある場合は利用を控え、証拠(メールや契約書)を保管すると安心です。
退職は人生の大事な決断です。安全に進めるために、運営元とサービス内容をしっかり確認し、必要なら専門家に頼ってください。


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