はじめに
本資料の目的
本資料は、退職理由の伝え方について分かりやすくまとめたガイドです。退職を考えたときに迷いやすい場面ごとに、伝え方やマナー、実際の例文まで丁寧に解説します。
想定する読者
・初めて退職を伝える方
・円満退職を目指す方
・上司や同僚にどう説明すればよいか悩んでいる方
本資料で学べること
・退職理由を話す場面と基本的な考え方
・退職届の書き方と例文の使い方
・伝えるタイミングや順序、引き継ぎの進め方
・上司・同僚・取引先への具体的な伝え方
使い方の目安
各章は順に読んでください。自分の状況に合わせて例文を応用すると実務で使いやすくなります。簡単なチェックリストや会話例も用意しているので、準備に役立ててください。
注意点
会社の規定や労働条件はそれぞれ違います。法的な判断が必要な場合は専門家に相談してください。
退職理由を伝える場面と基本的な考え方
伝える場面
退職理由を説明する場面は様々です。上司に口頭で伝える場面、退職届やメールで書く場面、人事や同僚に説明する場面、取引先に挨拶する場面があります。家庭の介護や育児、結婚、病気、業務過多や人間関係など事情は多様です。具体例を想定すると準備がしやすくなります。
退職届に記載する自由
法律で退職理由の書き方は定められていません。従業員は自由に記載できます。会社側も理由を問いただす権利は限定的です。ただし、退職理由が公的手続きや雇用保険の申請に影響する場合は、事実関係を正確に伝える必要があります。
一般的な表現:一身上の都合
自己都合で退職する場合、退職届には「一身上の都合」と記載するのが一般的です。詳細を省きたいときに使えますが、引き継ぎや社内調整では簡潔に理由を説明できる準備をしておくと良いです。
伝えるときの基本姿勢
誠実かつ冷静に伝えます。感情的な表現は避け、事実と希望する退職日を明確に示します。会社側の対応を考慮して引き継ぎの協力姿勢を示すと円滑に進みます。
注意点
- 退職理由を書き換えられないよう、提出前に内容を確認します。
- 法律や手続きに関わる場合は専門家に相談します。
以上を踏まえ、次章で具体的な記載例を見ていきます。
退職理由の記載方法と分類
概要
退職理由は大きく「自己都合」と「会社都合」に分かれます。自己都合は簡潔に「一身上の都合」と書くのが一般的です。会社都合は具体的な事情を明記すると手続きで有利になることがあります。
自己都合退職の書き方
自己都合の場合、理由を詳述する義務はありません。多くの企業では退職願や届に「一身上の都合により退職いたします」と記載すれば受理されます。家族の介護や転職、健康問題などを追記することも可能ですが、詳細は任意です。
退職願・退職届の文例
-
退職願(例)
令和〇年〇月〇日
株式会社〇〇 代表取締役 〇〇 様
私儀、一身上の都合により、令和〇年〇月末日をもって退職いたしたく、ここにお願い申し上げます。
〇〇部 〇〇(氏名) -
退職届(例)
令和〇年〇月〇日
ここに退職届を提出します。令和〇年〇月末日をもって退職します。
〇〇部 〇〇(氏名)
会社都合退職の書き方
会社都合は具体的事由を明記します。人員削減、部署閉鎖、雇止め、退職勧奨などです。事実関係や会社からの通知書があれば、日付や内容を併記すると良いです。正確な記載は失業給付や労働相談で重要になります。
会社都合の文例(例)
- 人員削減による退職:令和〇年〇月に実施された人員削減に伴い、雇用が維持できないため退職します(通知書添付)。
- 部署閉鎖による退職:〇年〇月に配属先部署が閉鎖され、異動先がないため退職します(社内通知の写しを添付)。
- 退職勧奨による退職:会社からの退職勧奨により退職を決断しました。勧奨の日時・担当者名を記載してください。
注意点
会社都合か自己都合かで手続きや給付に差が出ます。記載は事実に基づき簡潔にまとめ、必要に応じて証拠を添付してください。疑問がある場合は総務や労働相談窓口に相談することをおすすめします。
退職意思を伝える適切なタイミングと手順
目安となる時期
退職は原則として1~3カ月前に直属の上司に伝えます。最低でも1ヶ月前には届け出るようにしてください。繁忙期や大きなプロジェクトの締め切り、人事異動直後は避けるのが望ましいです。
伝える相手
まずは直属の上司に直接伝えます。同僚や部下に先に話すと混乱を招くため避けます。上役や他部署の上司に直接話すのも控えてください。
伝える手順(実践)
- 業務が落ち着いている時間を見計らい、面談の時間をお願いする。短いメールで調整するのが無難です。
- 面談では口頭で退職意思を伝え、理由は簡潔に。感謝の言葉を添えます。
- その場で退職希望日を提示し、引き継ぎの大枠を提案します。具体案を用意すると話が進みます。
- 必要に応じて退職願や退職届を提出し、人事手続きを確認します。
注意点
周囲に安易に話さない、感情的にならない、引き継ぎを放置しないことが重要です。誠実な対応が最後まで信頼を保ちます。
退職理由の伝え方における重要なポイント
一貫性を保つ
退職理由は誰に伝えても大筋で同じにしてください。上司と同僚、取引先で理由が変わると疑念や誤解を招きます。事前に話す内容を整理し、紙に書いて確認すると安心です。
表現をポジティブにする
ネガティブな詳細は避け、前向きな言い方に言い換えます。例:「キャリアチェンジのため」「家庭の事情で働き方を見直すため」など、相手が受け取りやすい表現を使ってください。
扱いにくい理由の言い換え方
待遇や人間関係が原因でも、直接的な批判は控えます。「より自分に合った環境を求めて」「生活と仕事のバランスを整える必要があったため」といった個人的な理由に変換すると角が立ちません。
退職希望日は具体的に
希望日をあいまいにしないでください。引き継ぎ期間を考え、社内ルールに沿った日付を提示します。可能なら候補日を二つ挙げて調整の余地を残します。
伝え方のマナーと簡単な例
敬意を持って話し、感謝を添えます。例:「これまでお世話になり、ありがとうございます。家庭の事情により◯月末で退職したく存じます。」短く明確に伝えると誤解が少なくなります。
上司への伝え方の実例
退職の意思はシンプルかつ明確に伝えることが大切です。ここでは対面とメールの実例、引き止められたときの対応、具体的なスケジュール提案を示します。
1. 対面での基本例(短めに伝える)
- 開口一番で用件を明確にします。例:「お時間よろしいでしょうか。大事なお話があります」
- 伝える本分は簡潔に。例:「私事で恐縮ですが、一身上の都合により○月○日をもって退職いたしたく決意しました。これまで大変お世話になり、感謝しております。引き継ぎは責任を持って行います」
2. 引き止められたときの対応
- 落ち着いて感謝を伝え、理由を淡々と述べます。詳細は必要最低限に留めます。
- 例文:「貴重なお話をありがとうございます。理由は個人的なキャリア(または家庭の事情)によるもので、私の決意は変わりません。引き続き業務は最後まで責任を持って務めます」
- 提案を受けた場合は一旦考える時間をもらうとよいです。例:「ご提案感謝します。検討の時間をいただけますか」
3. スケジュール提案の例(具体的で安心感を与える)
- 最終出社日と引き継ぎ案を示します。例:
- 最終出社日:○月○日
- 引き継ぎ内容:担当業務リスト作成、マニュアル作成、引き継ぎミーティング(担当者と日程調整)
- 具体案を示すと上司も調整しやすくなります。
4. メールで伝える場合の文例
- 件名:退職のご報告(氏名)
- 本文例:
部長 お世話になっております。私事で恐縮ですが、一身上の都合により○月○日をもって退職いたしたく存じます。業務の引き継ぎは責任を持って行います。これまでのご指導に感謝いたします。よろしくお願いいたします。
ポイント:感謝を忘れず、感情的な批判は避けます。対面で確認したら、話した内容を簡潔にメールで記録するとトラブルを防げます。
同僚・取引先への伝え方
はじめに
退職を同僚や取引先に伝えるときは、必ず上司に相談して伝える順序と方法を決めます。ビジネス上の信頼関係を崩さないよう配慮することが大切です。
同僚への伝え方
- 上司が関係者へ伝えるタイミングを確認します。まず直属の上司に伝え、次に一緒に働くチームへ個別に知らせます。対面が基本で、難しければ直接の電話やチャットで伝えます。
- 伝える内容は簡潔にします。退職理由は肯定的に伝え、批判や感情的な表現は避けます。最後の出社日や引き継ぎ予定を明示します。
取引先への伝え方
- 取引先には上司と調整したうえで連絡します。重要な顧客は電話で先に報告し、その後メールで正式に案内します。
- 連絡では代替の担当者や引き継ぎ窓口、業務の引継ぎ時期を明確にします。信頼維持のため、感謝の言葉を添えます。
連絡順序とタイミング
上司→関係部署→主要取引先→社内全体、が基本です。上司と日程を合わせ、混乱が起きないよう余裕をもって伝えます。
文例(短め)
同僚向け:”私事で恐縮ですが、このたび退職することになりました。最終出社は○月○日です。引き継ぎは○○が担当します。”
取引先向け:”いつもお世話になっております。私○○は○月○日をもって退職いたします。今後の担当は○○が務めます。引き続きよろしくお願いいたします。”
注意点
- 上司と相談せずに先に公表しない。- SNSでの先行告知は避ける。- 引き継ぎを丁寧に行い、感謝を伝える。


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