はじめに
本資料の目的
本資料は、親の介護を理由に退職を考えている方へ向けて作成しました。退職理由の伝え方や説得力のある例文を具体的に示し、職場との話し合いを少しでも楽にすることを目指します。
対象となる方
・親の介護で仕事と家庭の両立に悩んでいる方
・退職を上司にどう伝えるか迷っている方
・引き止められにくい伝え方を知りたい方
本資料で扱う内容
・親の介護による退職者の背景と主な原因(具体例付き)
・退職を伝える際のポイント(タイミング・伝え方・必要書類)
・実際に使える例文集(ケース別)
注意事項と進め方
個別の労働条件や家族の状況で対応は変わります。まずは職場の就業規則や家族の介護計画を整理し、本資料の例文を自分の事情に合わせて調整してください。
親の介護で退職する現状と理由
統計と全体像
2023年は親の介護を理由に退職する人が年間約27,050人に上ります。多くの人が仕事と介護の両立に悩み、退職を選ぶ傾向があります。介護は時間と労力を大きく奪いますので、働き続ける負担が膨らみやすいです。
仕事と介護の両立が難しい理由(具体例)
- 日中の介護サービスが不十分で、勤務時間と合わない。例えば通院やリハビリに付き添う必要がある場合は勤務調整が難しくなります。
- 夜間の介護対応が必要になり十分な睡眠が取れず、仕事の集中力が低下するケースがあります。
“自分しか介護できない”という事情
- 同居している、近くに頼れる親族がいないなど、介護の責任が一人に集中する例が多いです。子どもや配偶者の介助が必要な場合、優先順位が自然に介護側へ移ります。
健康面や精神的な負担
- 長時間の介護で体調を崩す人がいます。腰痛や睡眠障害、慢性的な疲労が仕事継続を難しくします。
- 精神的には不安や孤立感が強まり、職場でのパフォーマンス低下や休職につながることがあります。
介護に専念したいという選択
- 親に向き合う時間やケアの質を重視して退職を選ぶ方もいます。たとえば認知症の進行に合わせて生活環境を整えるため、時間の確保が必要になる場合などです。
親の介護を理由とした退職の伝え方
伝える前に準備すること
- 事実を整理する:親の年齢、持病、介護が必要になった具体的な状況(転倒・入院・認知症の症状など)をメモします。
- 緊急性と見通し:急を要するか、期間はどのくらい見込むかを書き出します。
- 代替案の検討:引き継ぎ案や有給消化、在宅勤務・時短の希望なども用意します。
伝え方のポイント
- 具体的に話す:抽象的な「家庭の事情」だけでなく、どのような介護が必要かを簡潔に説明します。
- 退職時期を明確にする:いつ退職したいか、引き継ぎに必要な日数を提示します。
- 感情を抑え落ち着いて:個人的な事情でも、職務への影響と対策を中心に伝えます。
面談の流れ(例)
- 冒頭で要件を伝える:「ご相談があります。親の介護のため退職を検討しています」
- 状況説明:年齢や症状、必要な介護内容と緊急性を伝える
- 日程提示と引き継ぎ案:希望退職日と引き継ぎ方法を示す
- 質問に答える:会社の疑問には率直に対応する
会社への配慮と提案
- 出来る限りの引き継ぎ資料を準備する
- 業務の優先順位を示し、短期間で引き継げる範囲を提示する
- 可能なら試用的な時短や休職の相談を先に打診すると円滑になります
伝える際は誠実さと具体性が理解を得る鍵です。
ケース別の退職理由の伝え方と例文
共通のポイント
・事実を短く伝えます。感情より状況(病名、介護の頻度、主介護者であること)を具体的に示します。
・家族での話し合い結果や医師の見立てを添えると説得力が増します。
・引継ぎや退職時期の希望も明記して、職場への配慮を示します。
ケース1:急な病気で緊急対応が必要な場合
説明:急変で即時対応が必要なときは、まず口頭で上司に相談します。理由と期間の見込みを伝えます。
例(口頭):「親が急な容体悪化で入院しました。私が対応する必要があり、一時的に退職(または休職)を検討しています。帰宅後に詳細をご報告します」
ケース2:長期介護で唯一の介護者となる場合
説明:自分が唯一の主介護者で、遠方に他の家族がいない等の事情を明確にします。
例(文面):「家族会議の結果、私が主に介護を担当することになりました。長期的な介護が見込まれるため、退職をお願いしたく存じます。引継ぎは◯月までに完了できます」
ケース3:具体的な介護内容が重い場合(夜間対応、入浴介助など)
説明:日常の支援内容を示すと理解を得やすいです。介護頻度や医療的ケアの有無を加えます。
例(文面):「親は週に数回の夜間の見守りと毎日の入浴介助、週1回の通院同行が必要です。現在の勤務と両立が困難なため、退職を希望します」
ケース4:家族会議で退職合意がある場合
説明:家族での合意があると職場側も受け止めやすいです。合意内容と今後の計画を記します。
例(文面):「家族会議にて合意し、私が介護を引き受けることになりました。介護計画は〇〇(例:週5回の訪問介護導入)で、退職日を〇月とさせてください」
ケース5:認知症など見通しが不確かな場合
説明:見通しが立たない場合は、医師の診断や今後の見通しを示し、可能なら在職中の短期的対応(短時間勤務等)も検討した旨を伝えます。
例(文面):「親が認知症と診断され、今後の介護方針を検討中です。現時点では長期的な対応が必要となる見込みのため、退職を希望します。引継ぎや退職日については相談させてください」


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