はじめに
この章では、本ドキュメント全体の目的と扱う内容をわかりやすく説明します。健康上の理由による退職を考える方が増えていますが、不安を感じる方も多いです。本書はそうした不安を少しでも減らすために作成しました。
- 目的：体調不良を理由とする退職が法的にどのように扱われるか、必要な手続きや準備、職場への伝え方、失業保険の受給条件などを整理します。
- 対象：正社員、契約社員、派遣社員など雇用形態に関係なく役立つ情報を目指します。
各章で具体例や実務的なポイントを示します。たとえば、診断書の有無や、退職の伝え方の例文、失業保険の手続きの流れなどを簡潔に説明します。読者が自分の状況に合わせて判断できるよう、無理なく読み進められる構成にしています。ご自身の体と生活を優先して考えるための手助けになれば幸いです。
体調不良は正当な退職理由として法的に認められている
法的な根拠
労働者が正社員として雇用されている場合、民法第627条により原則として退職の意思を2週間前に通知すれば契約を終了できます。体調不良を理由に退職したい場合でも、このルールが適用されます。やむを得ない事情があれば、即日退社が認められる場合もあります。
どんな場合に即日退社が認められるか
たとえば急性の病気で通院や入院が必要になったとき、医師から出勤が困難と判断されたとき、職場の環境が健康に深刻な悪影響を与えていると明らかになったときなどです。これらは「やむを得ない事情」として扱われやすいです。
実務上のポイント（具体例付き）
- 体調が悪化しているなら、まず上司に事情を伝えて休ませてもらう。たとえば高熱やめまいで通勤が困難な場合は即時対応を申し出てください。
- 可能なら診断書や医師の説明を準備すると、後のやり取りがスムーズになります（後章で詳述します）。
- 退職の意思は書面で残すと誤解を防げます。メールや退職届を使うとよいです。
留意点
会社の就業規則や雇用契約で別の取り決めがある場合もあります。まずは早めに相談し、必要な手続きを確認してください。
有期雇用契約者も体調不良を理由に退職できる
有期契約でも退職は可能です
契約期間が残っていても、体調不良を理由に退職できます。派遣社員や契約社員といった有期雇用者でも、「やむを得ない事情」があれば契約を続けられないと認められます。
民法第628条の考え方
民法第628条は、労働者が業務の継続に耐えられない理由があるとき、雇用を終了できると定めます。具体的には、治療が必要で出勤ができない、通院が長期化して業務に支障が出るなどが該当します。
判断の目安（具体例）
- 医師から就労を控えるよう指示がある
- 無理に出勤すると症状が悪化し長期療養が必要になる恐れがある
- 業務が治療や通院と両立できない
これらは「やむを得ない事情」に当たることが多いです。
実際の進め方
まずは主治医の意見を確認し、会社に速やかに状況を伝えます。診断書があれば説明がしやすくなりますが、必須ではありません。可能なら上司や人事と休職や配置転換の相談も試みてください。会社側が合理的な配慮を示さない場合は、退職を選ぶ正当な理由になります。
健康を優先することは決して悪いことではない
はじめに
健康を理由に退職を考えることは、恥ずかしいことでも怠けでもありません。体調を無視して続けると、症状が長引き生活や将来の働き方に影響します。
なぜ優先すべきか
無理をすると身体症状や精神的な不調が悪化します。たとえば慢性的な疲労で集中力が落ち、ミスが増えてさらにストレスがたまることがあります。短期的な我慢が長期の損失につながると考えてください。
実際の行動例（具体例）
- まずは医師に相談し、治療や休養の方針を確認します。
- 上司や人事に状況を伝え、休職制度や業務調整を相談します。
- 退職が必要な場合は、退職日や引き継ぎの計画を立てます。
心の持ち方と周囲への説明
自分の回復が最優先と伝えれば、理解を得やすくなります。罪悪感を感じたら、療養は仕事を続けるための前提だと考えてください。
支援を受けることの勧め
家族や友人、医療機関の助けを積極的に求めてください。一人で悩まず専門家に相談することで、最適な選択が見えてきます。
診断書について—原則不要だが準備があると有利
概要
退職にあたって診断書は原則不要です。とはいえ、就業規則で提出を求める会社や、休職・復職の手続きで必要になる場合があります。準備しておくと手続きがスムーズになります。
診断書とは
医師が「健康上の理由で職務継続が困難である」と記載する文書です。病名や症状、労働制限や療養期間が書かれます。医師の判断に基づく公的性のある書類です。
用意するメリット
- 会社との話が具体的になりやすい
- 休職や労災の相談が進めやすい
- 後でトラブルになったときに説明材料になる
依頼の仕方と内容
主治医に事情を伝え、「職務継続が困難な旨の診断書をお願いします」と相談します。記載してほしい項目は、病名（可能な範囲で）、業務制限、療養期間の目安です。精神疾患など詳細を知られたくない場合は、医師に範囲を限定して記載してもらうこともできます。
実務上の注意点
- 診断書には発行料がかかることが多いので事前に確認してください。
- 原本は会社へ、コピーは自分で保管します。
- 会社が不当に提出を強制する場合は、労働相談窓口に相談しましょう。
診断書は必須ではない場面が多いですが、準備しておくと安心して退職手続きを進められます。
円満退職のための伝え方
伝える相手と順序
まず直属の上司に伝え、その後に人事部へ報告するのが基本です。上司が不在の場合は、まずメールか電話で面談の日時を取るとスムーズです。労働条件や引き継ぎの相談は人事と行います。
伝え方のポイント
・病名の開示は義務ではありません。「体調不良」「一身上の都合」で差し支えありません。
・簡潔に伝え、感情的にならないようにします。
・対面が望ましいですが、難しければ電話やメールでも構いません。
例文（対面）:
「お時間よろしいでしょうか。体調不良のため今の業務を続けることが難しく、退職を考えています。手続きや引き継ぎについて相談させてください。」
例文（メール）:
件名: 退職についてのご相談
本文: いつもお世話になっております。私事で恐縮ですが、体調の都合により退職を検討しており、面談の機会をいただけますと幸いです。日程をご指定ください。
引き継ぎと提案
退職の意向を伝える際に、業務の一覧や進捗、引き継ぎ案を用意すると信頼感が生まれます。引き継ぎの優先順位、担当者候補、マニュアルやファイルの場所をまとめておきましょう。
メモと確認
やり取りは可能な限り書面で残してください。退職日や引き継ぎ条件は文書で確認し、必要なら退職願を提出します。
心構え
感謝の気持ちを伝え、冷静に対応すると円満に進みやすいです。まずは自分の健康を最優先にしてください。
失業保険（基本手当）の受給について
概要
健康上の正当な理由で退職した場合、失業保険（基本手当）の受給に有利に働くことがあります。会社都合や正当な理由での自己都合退職の場合、被保険者期間が6ヶ月以上あれば基本手当を受給できます。
受給の基本条件
- 対象となるのは雇用保険の被保険者期間が一定以上ある方です。先に述べたように、会社都合や正当な理由が認められる自己都合退職では被保険者期間が6ヶ月以上で受給できます。
- 通常の自己都合退職だと、給付制限（3か月程度）が付くことがあります。健康理由として正当性が認められれば制限が免除される場合があります。
判断と証拠の役割
- ハローワークが最終判断をします。医師の診断書や業務内容、会社とのやり取りの記録などが有利に働きます。
- 会社側が配置転換や治療の配慮を行わなかった場合は、会社都合に近い扱いになることがあります。記録を残しておくとよいです。
手続きの流れと必要書類
- 退職後、会社から「離職票」を受け取る。2. ハローワークで求職申込みと受給手続き。3. 説明会や初回認定を受ける。
持参書類例：離職票、身分証明書、マイナンバー、通帳、診断書（任意だが有利）。
受給開始までの期間
- 申請後に7日間の待期期間があります。自己都合で給付制限がある場合は、さらに給付開始が遅れます。
相談のすすめ
- まずハローワークで相談してください。必要なら診断書を医師に依頼し、場合によっては労働相談窓口や弁護士にも相談を検討してください。
まとめ—雇用形態に関係なく体調不良は正当な理由
体調不良は、正当な退職理由として広く認められます。正社員・契約社員や派遣社員といった雇用形態にかかわらず、業務継続が健康に悪影響を与える場合は退職を選べます。
- 法的な立場：業務と健康が両立できないと判断されれば退職は正当です。例えば、通院が続き業務に支障が出る場合も該当します。
- 診断書の扱い：原則として必須ではありませんが、会社が求めることもあります。診断書や通院記録を用意しておくと説明がしやすく、有利になります。
- 伝え方のコツ：上司には、事実を簡潔に伝え、退職希望日と引継ぎ案を示すと円満に進みやすいです。口頭で伝えた後に退職届を出すと手続きが明確になります。
- 手続きと保険：失業保険などの給付には条件がありますので、ハローワークで確認してください。
健康は大切です。無理を続けず、必要な準備を整えて穏やかに退職手続きを進めてください。
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