はじめに
目的
本資料は、契約期間満了による退職が「会社都合」か「自己都合」かといった扱いの違いや、失業保険の受給条件、退職届・履歴書の書き方、契約途中での退職との違いなど、契約社員や派遣社員の退職に関わる重要なポイントを分かりやすく整理することを目的とします。
対象読者
契約社員・派遣社員・更新を控えた方、また人事担当者や転職支援者にも役立つ内容です。専門用語は最小限にし、具体例で補足します。
本資料の構成と使い方
全6章で順に解説します。まず第1章の本章で目的と全体像を示し、第2章以降で判断基準、失業保険、書類の書き方、途中退職の扱いを詳述します。読み進めることで、自分の退職がどの扱いになるかの見通しが持てるようになります。必要な箇所だけ参照しても役立ちます。
契約期間満了による退職の分類
概要
契約期間満了で退職する場合、会社都合か自己都合かは主に「契約内容」「会社の対応」「労働者の意思」の3点で判断します。具体例を交えて分かりやすく説明します。
判断基準(3つの要素)
- 契約内容:雇用契約書に更新の有無や条件が明記されているか。例:契約書に「期間満了で終了」とある場合は自己都合とみなされやすいです。
- 会社の対応:会社側が更新を拒否したり更新の説明が無かったりした場合は会社都合になり得ます。例:契約満了直前に一方的に更新を断られた場合。
- 労働者の意思:労働者が更新を希望しないと明確に示した場合は自己都合となります。
会社都合に該当する主なケース
- 会社が契約更新を拒否した場合(人員整理など)
- ハラスメントや職場環境が原因で更新を断念した場合
- 会社の倒産や事業縮小で契約継続ができない場合
自己都合に該当する主なケース
- 労働者が自発的に更新を望まない場合(別の仕事へ移る等)
- 契約書に「更新なし」と明記されている場合
特定理由離職者に当たるケース
家庭の事情や勤務地の変更に伴うやむを得ない事情など、一定の条件を満たすと特別扱い(失業保険の取り扱いが優遇されることがあります)になります。具体的な該当性は状況ごとに異なります。
実務的なアドバイス
契約書や更新に関するやり取りは書面やメールで保存してください。疑問があればハローワークや労働相談窓口に相談するとよいです。したがって、証拠を残すことが重要です。
契約期間の途中での退職との違い
基本的な違い
契約期間の途中で退職する場合は、誰の申し出で辞めるかが重要です。本人が申し出れば一般に「自己都合退職」、会社が申し出れば「会社都合退職」と扱われます。対して契約期間満了による退職は、契約そのものの終了であり事情や当事者の対応で扱いが変わります。
具体例でわかる違い
- 本人の申し出(途中): 就業中に「家庭の事情で辞めたい」と伝えて退職する場合は自己都合になります。
- 会社の申し出(途中): 会社から業務縮小で解雇される場合は会社都合になります。
- 契約満了: 契約通りに期間が終わる場合は「満了退職」です。契約内容で更新の有無や会社の対応が決まるため、単純に途中退職とは異なります。
手続きと注意点
- 契約書や就業規則を必ず確認してください。
- 途中退職では退職理由や手続きで不利になることがあります。書面やメールでやり取りを残すと安心です。
- 不明点があれば労働相談窓口やハローワークに相談すると早く解決します。
契約満了か途中退職かで扱いが変わるため、自分の意思と会社の対応を整理して行動してください。
失業保険の受給について
受給資格について
契約社員や派遣社員が契約満了で退職した場合も、雇用保険に加入して一定期間働いていれば失業保険(基本手当)を受けられます。加入期間や過去の就業状況で条件が変わるため、まずはハローワークで自分の該当状況を確認してください。
会社都合と自己都合の違い
退職の理由が会社側の都合(契約満了や事業縮小など)だと、受給の条件が緩やかになり、給付までの待機期間や給付制限が短くなることが多いです。自己都合退職の場合は待機や給付制限が長くなる点に注意してください。
手続きの流れ
- 退職後に会社から渡される「離職票」を受け取ります。これが手続きの基本書類です。
- 離職票を持ってハローワークで求職の申し込みをします。窓口で受給手続きの説明を受け、必要書類を提出します。
- ハローワークの指示に従い、受給資格の決定や説明会に参加します。指定された期間に求職活動の報告が必要です。
必要書類(代表例)
- 離職票(会社が発行)
- 身分証明書(運転免許証など)
- マイナンバー確認書類
- 雇用保険被保険者証(持っていれば)
注意点
- 退職理由は正確に伝えましょう。誤解があると給付が遅れることがあります。
- 就職が決まった場合は速やかにハローワークに報告してください。
- 給付日数や手続きの詳しい条件は個人によって異なります。必ずハローワークで具体的な説明を受けることをおすすめします。
退職届と履歴書への記載方法
退職届
- 原則は自己都合退職で提出しますが、契約期間満了の場合は通常不要です。会社から求められたときは、簡潔に理由を記載します。例:「契約期間満了に伴い退職いたします。」日付・氏名・押印(必要な場合)を忘れずに記載してください。
履歴書への記載
- 自己都合退職の場合:\”一身上の都合により退職\”と記載します。理由の詳細は面接で説明します。
- 契約期間満了の場合:\”契約期間満了につき退職\”と書きます。更新がなかったことを示せます。
- 会社都合の場合:会社からの指示や倒産などが理由なら、\”会社都合により退職\”と正確に記載します。後の手続きで差が出るため事実に基づいて書いてください。
記載例(短文)
- 退職届:\”このたび契約期間満了のため、退職いたします。令和○年○月○日 ○○(署名)\”
- 履歴書:\”令和○年○月 契約期間満了につき退職\”
注意点
- 虚偽の記載は避けてください。雇用保険や再就職時の確認で不都合が生じます。
- 会社から文書の様式がある場合は従ってください。口頭でのみ伝えられた事情は控えめに記載し、必要なら証明書類を求めましょう。
- 日付は西暦・和暦どちらでも構いませんが、履歴書の他の記載と統一してください。
契約期間満了前の途中退職について
契約社員でもやむを得ない事由があれば、契約期間の途中でも退職できます。ご相談の前提として、労働基準法の考え方では「契約期間が1年以上で、かつ契約開始から1年以上経過している」場合に途中退職の申し出が認められる旨が示されます。まずはご自身の雇用契約書を確認してください。
途中退職の主な理由(具体例)
- 仕事内容が想定と大きく違った(ミスマッチ)
- 職場の人間関係が悪化した
- 長時間労働や過重な業務で健康を害した
- 家庭の事情や介護、育児などで継続が困難になった
進め方(実務的な手順)
- 契約書の早期解約条項や期間を確認する。
- まずは上司や人事と早めに話し合う。口頭で伝えた内容は必ず記録に残すと安心です。
- 書面で退職の意思を示す(退職届やメール)。提出日や理由は簡潔に書き、控えを保管します。
- 引継ぎや業務整理の計画を作成して提示する。職場への負担を減らす姿勢が交渉を円滑にします。
会社側の対応と交渉
会社が同意すれば円満に退職できますが、同意を得られない場合は話し合いを継続します。治療や家庭の事情がある場合は医師の診断書など客観的な資料を用意すると説得力が上がります。
退職後の手続き・相談先
退職に伴う手続き(給与、未消化の有給、社会保険の整理等)を確認してください。失業給付を受ける場合はハローワークで手続きが必要です。トラブルがある場合は労働局(労働基準監督署)の相談窓口、労働組合、または弁護士に相談するとよいです。
何より重要なのは、感情的にならず記録を残し、相手と丁寧に話し合うことです。準備を整えて適切な手続きを進めてください。


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