はじめに
本章の目的
退職理由として「一身上の都合」を使う際の基本的な考え方と、書き方・伝え方の全体像を分かりやすく紹介します。後の章で具体例を示しますので、まずは共通のルールを押さえましょう。
「一身上の都合」とは
「一身上の都合」は私的な事情を幅広く示す表現です。詳しい理由を企業に伝える義務はありません。形式的で短くまとめることが一般的で、マナー上問題になりにくい表現です。
基本の考え方
- 短く定型的に書く:退職願・退職届では「一身上の都合により退職いたします。」だけで十分です。面談で深掘りされても、答えるかどうかは本人の判断です。
- 相手への配慮:感謝の言葉を添えると印象が良くなります。例:「在職中は大変お世話になりました」。
- 期限と手続き:就業規則に従い、退職日や引継ぎを明確にします。具体的な日付は必ず書きましょう。
伝え方のポイント
- 書面は簡潔に、口頭は誠実に。
- 個人的な理由がデリケートなら「私的な都合」と一言加えるだけで丁寧です。
- 会社から詳細を求められた場合でも、答えたくない内容は伝える必要はありません。代わりに今後の対応や引継ぎについて説明しましょう。
退職願・退職届に書く例文
基本の構成
退職願・退職届は宛名、本文、退職日、提出日、署名(押印)を揃えます。本文は簡潔で問題ありません。日付・社名・部署名・氏名を所定の書式どおりに記載してください。
例文(退職願・文面の例)
「このたび、私事ではございますが、一身上の都合により、〇年〇月〇日をもちまして退職いたしたく、ここにお願い申し上げます。」
「誠に勝手ながら、一身上の都合により、〇年〇月〇日をもちまして退職させていただきたく、お願い申し上げます。」
上記はいずれも一般的な表現です。宛先(例:〇〇株式会社 代表取締役 〇〇様)、部署名、氏名、提出日を添えてください。
例文(退職届・確定的な文面の例)
「退職届
私、〇〇は、一身上の都合により〇年〇月〇日をもって退職いたします。よって本日をもって届け出ます。」
(署名・押印)
書き方のポイント
- 退職日は具体的に記入します。業務の引継ぎ期間を考慮してください。
- 文章は短く礼儀正しくします。理由を詳述する必要はありません。
- 提出前に上司へ口頭で伝え、受理方法(手渡し、郵送)を確認しておきます。
注意点
- 退職届は会社が受理すると契約上の手続きが始まります。提出前に十分に準備してください。
- 押印やコピーを保管すると後のトラブルを避けられます。
面談・口頭で伝える例文
はじめに
面談や口頭で退職を伝えるときは、簡潔で丁寧な言い方を心がけます。理由を詳しく話す義務はありません。「一身上の都合」で統一してもマナー上問題ありません。
例文(短め)
- 「お時間よろしいでしょうか。私事で恐縮ですが、一身上の都合により〇月末をもって退職させていただきたく存じます。」
例文(家庭や事情を詳しく話したくない場合)
- 「家庭の事情があり、一身上の都合により退職を希望しております。詳細は差し控えさせてください。」
例文(業務引継ぎにふれる場合)
- 「退職の意思は固まっており、引継ぎは〇週間でまとめる予定です。引継ぎ資料は作成いたしますので、ご指示をいただけますでしょうか。」
上司からの質問への応答例
- 退職理由を聞かれたら:『一身上の都合です』とだけ伝え、詳細は『差し控えさせてください』と答えます。
- 退職日を確認されたら:『〇月末を目途に考えておりますが、相談の上で調整させてください』と柔らかく答えます。
面談前の準備と注意点
- 書面(退職願・退職届)を準備しておくとスムーズです。
- 感情的にならず感謝の言葉を添えます。業務に支障が出ないよう引継ぎ案を用意します。
- 会社の就業規則に沿った手続きや期間を確認しておきます。
短く簡潔に伝え、必要があれば引継ぎや日程の調整を提案すると印象が良くなります。
履歴書・職務経歴書に書く例
履歴書に書く例
履歴書では簡潔さが大切です。よく使われる表現を示します。
- 退職理由:一身上の都合により退職。
- 退職理由:一身上の都合(出産のため退職)
- 退職理由:一身上の都合(介護のため退職)
- 退職理由:一身上の都合(配偶者の転勤のため退職)
括弧で補足することで事情が伝わりやすくなります。長文は避け、応募書類では上の程度で十分です。
職務経歴書に書く例
職務経歴書では在籍期間と簡単な退職理由を並べて記載します。例えば:
- 株式会社A 2016/4〜2020/3 業務内容:営業/退職理由:一身上の都合(育児のため)
- 株式会社B 2020/4〜2023/9 業務内容:企画/退職理由:キャリアチェンジ希望のため退職
空白期間がある場合は月単位で記し、理由も一言で補足します(例:2019/5〜2020/3 育児休暇)。
応募書類は事実を簡潔に伝える場所です。詳細は面接で丁寧に説明するとよいです。


コメント