はじめに
概要
本資料は、就業規則に記載する最低賃金の記載例をわかりやすく示すことを目的としています。記載の考え方、具体的な文例、記載時の注意点を順に解説します。
本資料の目的
人事担当者や経営者が、職場で使える実務的な記載例を手早く確認できるように作成しました。専門用語は最小限にし、実際の書き方を中心に説明します。
対象読者
就業規則を作成・改定する方、労務管理に関わる方、社内でルール作りを担う方を想定しています。社労士や顧問の方も参考にできます。
本資料の構成
第2章で記載の方法、第3章で具体例、第4章で重要な注意点を扱います。順に読めば実務で使える形にまとめてあります。
読み方のポイント
最低賃金は地域や業種で変わります。ここでは表現の仕方と考え方に焦点を当て、具体的な数値は各事業所で最新の法令に合わせて置き換えてください。
最低賃金の記載方法
概要
就業規則に最低賃金を記載する方法は大きく二つあります。ここではそれぞれの書き方、利点・注意点、具体例をわかりやすく説明します。
1. 抽象的な表現で法令遵守を明記する方法
内容:最低賃金額を毎年改定するため、具体的な金額を記さずに法令の適用を明示します。
例文:”当事業場の賃金は、最低賃金法その他関係法令の定めるところによるものとする。”
利点:最低賃金が変わっても就業規則を改定する必要が少なく、運用が楽です。
注意点:従業員に分かりやすくするため、別途掲示や周知方法を定めておくと安心です。
2. 具体的な金額を記載する方法
内容:特定の助成金や契約条件で金額記載が求められる場合に用います。
例文:”当事業場における最も低い賃金額は、時間給又は時間換算額1,030円とする。”
利点:金額が明確なので審査や条件確認が容易です。
注意点:最低賃金が上がった場合に就業規則の記載も見直す必要があります。自動的に法令額を適用する旨の一文を併記すると運用が安定します(例:”ただし、法令により高い額が定められた場合はその額を適用する。”)。
記載時のポイント(チェックリスト)
- 対象者(正社員、パート、アルバイト等)を明記する
- 単位(時間給、日給、月給の換算方法)を示す
- 適用開始日を記載する
- 更新方法や見直しの規定を用意する
- 試用期間や例外の扱いを明確にする
以上を参考に、事業場の実情に合わせて選択してください。必要なら具体的な文言案を一緒に作成します。
記載例
以下では、実務ですぐ使える記載例を示し、それぞれのポイントをわかりやすく解説します。
例1:法令遵守を明記する場合
- 記載例:賃金は最低賃金法を遵守する。
- 解説:シンプルに法令順守を示します。短く分かりやすい反面、どの事業場に適用するかや細かい計算方法は記載しません。必要に応じて適用範囲や適用開始日を付け加えると良いです。
例2:事業場内最低賃金を設定する場合
- 記載例:最低賃金は1,200円とする。ただし、最低賃金法(昭和34年法律第137号)第7条に基づく最低賃金の減額の特例許可を受けた者を除く。
- 解説:事業場ごとの最低額を明示しています。除外規定を入れることで、法による例外者を扱えます。金額は円で明記し、適用開始日や対象者(パート・アルバイト・契約社員など)も合わせて記載すると運用が明確になります。
例3:時給制の具体例
- 記載例:当事業場における最も低い賃金額は、時間給又は時間換算額1,030円とする。
- 解説:時給と時間換算額の両方を示すことで、日給や月給を時間単位で換算した場合の最低額も担保できます。時間換算の算出方法(総支給額を所定労働時間で割る等)や手当の取り扱い(含むか否か)を別途明確にしてください。
各例とも、適用開始日・対象範囲・算出方法を合わせて記載すると運用で迷いが少なくなります。必要に応じて具体的な計算例を付けることをおすすめします。
重要な注意点
法令通りか社内最賃か
法令どおりの最低賃金のみを適用している場合、特に社内で別途設定した最低額を求人票などに追記する必要はありません。ですが、会社が法令以上の「社内最賃」を設定しているときは、求人票・雇用契約書・就業規則などに明確に記載してください。記載例:
– 「最低賃金:時給1,050円(当社規定の社内最低賃金)」
毎年の改定と定期メンテナンス
最低賃金は毎年10月に改定されることが多いため、定期的な確認と更新が必要です。対応の流れは次の通りです。
– 9月中に新基準を確認する(地方自治体の発表をチェック)
– 10月1日付けで給与計算・求人情報・就業規則を更新する
– 従業員へ変更内容を周知し、必要なら雇用契約を再交付する
表示や運用で気をつけること
- 表示は「時給○○円」と明記する方が分かりやすいです。
- 通勤手当や家族手当など、最低賃金の計算に含めるか判断が難しい場合は労働基準監督署に確認してください。
- 求人サイトやパンフレットに古い金額が残らないよう、掲載媒体ごとに更新漏れがないか点検してください。
更新担当と記録保管
更新担当(人事・総務など)を決め、変更履歴を保存してください。変更日と適用範囲を記録しておくと、後での説明や監査に役立ちます。必要時は労働基準監督署に相談することをお勧めします。


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