離職票の契約期間満了に関する正しい書き方ガイド

目次

はじめに

本書は、契約期間満了による離職に際して企業の人事・労務担当者が正しく離職票(離職証明書)を作成できるよう、実務上のポイントを分かりやすくまとめたガイドです。

目的

離職票の誤記や記載漏れは、雇用保険給付やトラブルの原因になります。本書は記入の手順や注意点、必要書類を具体例とともに示し、担当者が短時間で確実に対応できることを目指します。

対象読者

主に中小企業の人事・総務担当者、契約社員を多く雇用する部署の担当者を想定しています。初めて離職票を扱う方にも配慮した内容です。

本書の使い方

各章で項目ごとに解説します。実務で迷ったときは、第4章の「記入すべき14項目」や第6章の「賃金・出勤状況の記載ルール」を先に確認してください。

注意事項

法令や様式は改定されることがあります。社内の就業規則や労務顧問と照らし合わせてご利用ください。

離職票と離職証明書の基本概念

離職票とは

離職票は、失業保険を受け取るために必要な公的な書類です。労働者がハローワークに給付を申請するときに提出します。これがないと給付手続きが進みません。

離職証明書とは

企業が作成する「雇用保険被保険者離職証明書」のことです。会社が離職した従業員の雇用期間や賃金、離職理由を記載してハローワークに提出します。ハローワークはその内容を基に離職票を発行します。

手続きの流れと期限

会社は離職日の翌々日から10日以内に必要書類をハローワークに提出します。例:8月31日で離職した場合、提出期限は9月11日(翌々日から10日以内)です。ハローワークで確認後、離職票が発行され、労働者へ郵送されます。

労働者と企業の注意点

労働者は離職票が届いたら記載内容を確認してください。誤りがあれば早めに会社とハローワークに連絡します。企業は正確に記載し期限を守る必要があります。遅延や誤記は給付開始の遅れにつながります。

契約期間満了による離職の分類

趣旨

契約期間満了で退職する場合でも、離職理由の区分で扱いが変わります。受給条件や給付の開始時期に関わるため、理由の判断は重要です。

会社都合に該当する場合

労働者が契約更新を希望したのに会社が更新しなかったときは、原則として「会社都合」となります。たとえば、契約満了前に更新を求める意思表示があり、会社が更新を断ったり何の対応もしなかった場合です。会社都合だと失業給付の不利な扱いが緩和されます。

特定理由離職に該当する場合

定年後の有期契約で再雇用された人が、再雇用契約の満了で退職する場合は「特定理由離職」に該当することが多いです。年齢や雇用形態に基づく契約満了が該当します。

記録と対応

離職証明書には、契約更新の希望や会社の対応を具体的に記載してください。雇止め通知やメール、面談記録などを保存しておくと判断が明確になります。

事例

・契約社員A:更新を希望したが会社が更新せず→会社都合
・再雇用B:定年後の再雇用契約満了→特定理由離職

以上を踏まえ、離職理由は事実に基づき正確に記載してください。

離職証明書の記入における重要な14項目

離職証明書は手続きの要です。以下の14項目を漏れなく正確に記入してください。

  1. 被保険者番号
  2. 届け出と同じ番号を記入。誤りがあると処理が止まります。
  3. 事業所番号
  4. 会社ごとの番号です。雇用保険関係書類と一致させます。
  5. 離職者氏名
  6. 戸籍や雇用契約書と同じ表記で記入します。
  7. 生年月日
  8. 同姓同名の誤認を防ぐため正確に。
  9. 離職年月日
  10. 「雇用保険被保険者資格喪失届」と同日であること。異なると受理されない場合があります。
  11. 最終出勤日と最終給与支払日
  12. 休職や未払がある場合は明記します。
  13. 事業所名・所在地・代表者
  14. 会社印を押すため正確に記載。
  15. 雇用の開始日と期間
  16. 契約期間満了の場合は契約書通りに。
  17. 離職理由(簡潔に)
  18. 分類コードや短い説明を添えると分かりやすいです。
  19. 賃金の支払状況
  20. 最終賃金・賞与の有無・未払があれば金額を記入。
  21. 出勤日数や欠勤日数
  22. 給与計算に関わるため正確に。
  23. 備考欄(特記事項)
  24. 研修中、試用期間、雇止めの有無などを記載。
  25. 連絡担当者名と連絡先
  26. 窓口がはっきりしていると問い合わせ対応が速くなります。
  27. 署名・押印と作成日
  28. 代表者の署名または捺印を忘れないでください。

記入後は必ず原本と照合し、コピーを保管してください。日付や金額は特に注意して確認しましょう。

離職理由の具体的な記載方法

基本的な考え方

契約期間満了で退職する場合、離職票-2では「会社都合」または「特定理由離職」のいずれかにチェックし、短く具体的な理由を添えます。理由は事実を中心に書き、感情や詳細な背景説明は避けます。

書き方のポイント

  • 主語と原因を明確にする(例:「契約期間満了により雇止め」)。
  • 日付や期間を入れる(例:契約期間〇年〇月〜〇年〇月、離職日〇年〇月〇日)。
  • 医療・介護・配偶者転勤などのやむを得ない事情は具体名を書き、必要な添付書類を準備する。
  • 言い回しは簡潔に(1行〜2行)。評価的表現は避ける。

具体例(雛形)

  • 会社都合(雇止め): 「契約期間満了による雇止め(事業縮小のため、更新なし)」
  • 特定理由(病気): 「契約期間満了(本人の疾病により療養を要するため更新不可)」
  • 特定理由(介護): 「契約期間満了(家族の介護のため、継続勤務困難)」
  • 特定理由(配偶者転勤): 「契約期間満了(配偶者の転勤に伴い通勤不能)」

添付書類の目安

  • 病気:医師の診断書や診療情報の写し
  • 介護:介護認定の写しや家族の状況を示す資料
  • 配偶者転勤:転勤通知や住居移転の証明
  • 雇止め:雇止め通知、契約書の写し

記載は事実を簡潔に示すことが最も重要です。必要な証明を準備して、誤解のない表現で記入してください。

賃金・出勤状況の記載ルール

  • 賃金・出勤状況が失業保険の給付額に直結します。離職前6か月(または12か月)の給与支払状況と出勤日数を正確に記入してください。

  • 準備するもの:給与明細、出勤簿、賃金締切日(就業規則や給与規定で確認)を用意します。

  • 賃金の扱い:基本給、通勤手当、残業代など給与明細に記載された対象額を合計します。賞与は通常別に扱うため、明細に従ってください。

  • 出勤日数の数え方:実際に働いた日と有給で扱われた日を出勤日数に含めます。無給欠勤は含めません。

  • 賃金締切日の期間記入:離職日の直前の賃金締切日の「翌日」から離職日までの期間をまず記入します。この期間の支払基礎日数(賃金が支払われる対象となる日数)が11日以上になるように調整してください。支払基礎日数が11日未満なら、記入開始日を前の締切日の翌日まで遡って期間を延ばします。

  • 具体例:毎月20日締めで離職日が3月28日の場合、直前締切日の翌日=3月21日から3月28日は8日です。8日では支払基礎日数が11日に満たないため、記入開始日をさらに前(月の締切日の翌日)まで遡り、合計で11日以上になるようにします。

  • 注意点:欠勤・休業で賃金が支払われていない日や、手当の有無で金額が変わります。給与明細と出勤簿を突き合わせて、実際に支払われた日数・金額を記載してください。

必要な添付書類

契約期間満了で離職したことを客観的に示すために、以下の書類を準備してください。できるだけ原本または会社の押印・署名がある写しを添付すると信頼性が高まります。

  • 労働契約書
  • 契約期間や業務内容、更新条件が記載された書類です。開始日・終了日が明記されている部分をコピーし、見やすくして添付します。
  • 雇入通知書・雇用条件通知書
  • 採用時に交付された書類で、契約形態や有期契約の旨が分かるものです。契約更新に関する記載があれば重要です。
  • 契約更新通知書・更新確認の記録
  • 更新の有無や更新時期を示す書類やメールの記録を添付してください。更新しない旨の通知があれば確実な証拠になります。
  • タイムカード・出勤簿・勤務記録
  • 雇用期間中の出勤状況を示します。日付と出勤時間が分かるものを用意します。
  • 賃金台帳・給与明細
  • 支払い実績や勤務期間を裏付けます。最終給与や支払日が分かる部分を添付してください。
  • 会社からの雇止め通知や終了通知の写し(ある場合)
  • 会社が契約満了を理由に終了を通知している文書は非常に重要です。

添付時の注意点:
– 原本が提出できない場合は、コピーに「原本と相違ない旨」の記載と署名を添えるとよいです。
– 電子メールやチャットでのやり取りを添付する場合は、送受信日時と差出人が確認できるスクリーンショットやPDFにします。
– 書類の提出順やファイル名を分かりやすくすると審査がスムーズです。

これらの書類を揃えることで、契約期間満了による離職であることを客観的に示せます。不足がある場合は、会社に証明を依頼するか代替資料(給与明細と出勤簿の組み合わせなど)を用意してください。

提出手続きと期限

提出先

所轄のハローワーク(公共職業安定所)に提出します。会社が手続きを行うのが原則です。社員本人が相談に行くこともできます。

提出書類(必須)

  • 雇用保険被保険者資格喪失届(マイナンバー記載必須)
  • 雇用保険被保険者離職証明書(3枚複写)
  • 給与・出勤状況を示す書類(給与明細、出勤簿など)

提出期限の数え方と具体例

提出期限は「離職日の翌々日から起算して10日以内」です。離職日を0日目とせず、翌々日(離職日の2日後)を1日目として10日以内に提出してください。
例:離職日が4月1日なら、提出期限は4月3日を起算日として4月12日までです。

手続きの流れ(企業側)

  1. 必要書類を整える。2. 離職証明書に事実を記載・押印する。3. ハローワークに持参または郵送する。

社員ができること・注意点

  • 会社が提出しない場合はハローワークに相談してください。提出遅延は失業給付の開始遅れに繋がります。郵送する場合は書留や配達記録を残してください。書類の記載漏れやマイナンバー未記入に注意し、控えを保管してください。

雇止め通知との関連性

概要

契約更新を希望する労働者に対し会社が更新しない場合、雇止め通知書を作成し交付、受領のサインを得ることが重要です。トラブル防止と、離職票作成時の根拠書類になります。

作成・交付のタイミング

通常、契約満了の2〜3ヶ月前を目安に通知します。短期間雇用や特別な事情がある場合は早めに対応します。手渡しでサインを受け取るのが望ましく、郵送の場合は配達記録の残る方法を使います。

記載すべき主な項目

  • 労働者氏名、契約満了日
  • 更新しない旨の明確な記載(理由は簡潔に)
  • 通知日、発行者の氏名・連絡先
  • 受領サイン欄(受領日と署名)

保存と離職票への影響

原本は会社で保管し、労働者にもコピーを渡します。雇止め通知は離職事由を裏付ける重要書類なので、離職票作成時や失業給付の手続きで提出を求められることがあります。

実務上の注意点

事実を簡潔に記載し、感情的な表現は避けます。内容に不安がある場合は労務担当や専門家に相談してください。

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