労働基準法89条が定める就業規則の重要ポイント解説

目次

はじめに

「就業規則をどう整えればよいかわからない」「法律上の義務を見落としたくない」といった不安を抱えていませんか?本記事は、労働基準法第89条に基づく就業規則の作成義務や届出手続き、記載すべき事項、罰則、実務のポイントをわかりやすく解説します。

対象は企業の経営者、人事担当者、労務担当者です。専門用語はできるだけ避け、具体例を交えて丁寧に説明します。この記事を読むことで、就業規則を作成・変更するときに押さえるべき基礎知識と、日常の運用で注意すべき点がつかめるはずです。

本記事の構成は以下のとおりです。

  • 第2章:労働基準法第89条とは
  • 第3章:就業規則作成義務の発生要件
  • 第4章:就業規則に記載すべき事項
  • 第5章:作成・変更の手続き
  • 第6章:届け出・周知義務
  • 第7章:罰則規定
  • 第8章:実務上のポイントと留意点
  • 第9章:まとめ

まずは基本を押さして、適切なルール作りの一歩を踏み出しましょう。

労働基準法第89条とは

概要

労働基準法第89条は、常時10人以上の労働者を使用する事業場の事業主に、就業規則の作成と労働基準監督署への届出を義務付ける規定です。就業規則は賃金・労働時間・退職など労働条件や職場のルールを明確にするためのものです。

条文の趣旨

この規定は、労働者の基本的な権利を守るために事業所ごとのルールを明確化し、公正な労働条件を確保することを目的としています。例えば、給与や休暇の扱いを明示しておくと、トラブルを避けやすくなります。

対象となる事業場の例

  • 従業員が12人の小売店
  • 常時10人の工場
    このように、常時10人未満の場合は作成義務は生じませんが、作成すると管理に役立ちます。

就業規則で扱う主な項目(概要)

  • 賃金の計算・支払い方法
  • 労働時間・休憩・休日
  • 退職・解雇のルール
  • 服務規律や懲戒の基準

作成・届出の実務的なポイント

就業規則は書面で作成し、所轄の労働基準監督署に届け出ます。従業員に分かりやすく周知し、変更時も手続きを行います。実際の運用に合わせて具体的な例や手順を盛り込むと役立ちます。

就業規則作成義務の発生要件

概要

常時10人以上の労働者を雇用する事業主は、就業規則を作成して労働基準監督署へ届け出る義務があります。ここでの「常時」は日常的に働く人数の合計を指します。

「常時」の具体的な意味

「常時」とは、一時的でない継続的な雇用を想定します。例えば、正社員だけでなくパート・アルバイト・契約社員も含めます。季節的な繁忙期だけ雇う短期労働者は、継続性がなければ除外する場合があります。

カウントされる人の例

  • 正社員、契約社員、嘱託
  • パート・アルバイト(継続的に勤務する者)
  • 派遣労働者は、派遣先ではなく派遣元の雇用関係に基づきますので個別に確認が必要です。

カウントされない例

  • 業務委託の個人事業主(雇用関係がない)
  • ごく短期の臨時労働者(継続性がない場合)

発生のタイミングと実務対応

人数が10人に達した時点で作成と届出の準備を始めてください。人数の変動がある場合でも、常態として10人以上であれば義務が生じます。義務がない場合でも、トラブル防止のため就業規則を作成することをおすすめします。

実務チェックリスト

  1. 全従業員の雇用形態を整理する
  2. 継続的に勤務する人数を算出する
  3. 10人以上なら就業規則を作成し、届出する
  4. 人数変動時は社内で速やかに確認する

以上の点を踏まえて、早めに対応を進めてください。

就業規則に記載すべき事項

絶対的必要記載事項

就業規則には、労働者にとって重要な基本ルールを明確に記載します。具体的には次のとおりです。

  • 始業・終業時刻
  • 具体的な勤務開始・終了時刻、交替制勤務の例を示します。例:始業9:00、終業17:30(休憩1時間)。
  • 休憩・休日・休暇
  • 休憩の取り方、法定休日、年次有給休暇の付与日数や取得手続きの例を記載します。
  • 賃金の決定・計算・支払い方法・締切・支払時期
  • 基本給や手当の算出方法、残業代の計算、振込や現金支払い、締日・支払日を明記します。例:月末締め、翌月25日払。
  • 退職に関する事項(解雇を含む)
  • 退職の手続き、自己都合・会社都合の扱い、解雇事由や予告に関する規定を記載します。

相対的必要記載事項(該当する場合)

業種や会社の実情に応じて記載が必要です。主な項目は次の通りです。

  • 賞与・退職金:支給基準や計算方法の例を示します。
  • 安全衛生:健康診断や安全教育、産業医の配置に関する事項。
  • 災害補償:業務上の傷病に対する補償規定。
  • 表彰・制裁:功労の表彰基準や懲戒処分の種類・手続き。

該当する項目は具体例や手続きの流れまで書くと、トラブル防止に役立ちます。

就業規則作成・変更の手続き

概要

就業規則を作成・変更するときは、労働者代表の意見を聞く必要があります。意見を聞くことは義務ですが、労働者の同意を得る必要はありません。作成・変更後は、速やかに労働基準監督署へ就業規則の写しを届け出ます。

意見聴取の方法とポイント

  • 誰の意見を聞くかを明確にします(労働組合があればその代表、それ以外は労働者代表)。
  • 聴取は書面が望ましく、口頭でも記録を残します。例えば「意見書」や「議事録」を作成しておきます。
  • 労働者代表は使用者から独立した人物を選びます。選び方の例は後述します。
  • 意見が出た場合は内容を文書で保存し、就業規則の変更理由とあわせて保管します。

労働者代表の選出例

  • 小規模事業所:従業員の投票で1名選出。
  • 組合がある場合:組合代表が担当。
  • 実務上は選出方法を記録に残しておくと後のトラブルを防げます。

届け出の手続き

  • 就業規則の写しを作成し、変更があれば変更後の写しを用意します。
  • できるだけ速やかに最寄りの労働基準監督署へ提出します。
  • 提出書類は各都道府県の監督署で受付け方が異なる場合があるため、事前に確認します。

実務上の注意点

  • 労働者に不利な変更は後で争いになりやすいので、意見聴取や説明を丁寧に行っておきます。
  • 意見を聞いた記録、届出の控え、配布・掲示の記録は必ず保存してください。
  • 小さな変更でも届け出が必要です。担当者を決めて手順を標準化すると安心です。

届け出・周知義務

1 届け出後の管理

就業規則を労働基準監督署に届け出たら、事業主は労働者がいつでも閲覧できるように管理します。書類を倉庫にしまい込むのではなく、出勤時に目に触れる場所や電子媒体で常時アクセスできる状態にしてください。実際には事務所の掲示板やイントラネット、従業員用ファイルがよく使われます。

2 周知の義務(閲覧と説明)

単に置いておくだけでなく、労働者に内容を周知する責任があります。新しい規則や変更点は、対象者に分かりやすく伝え、必要なら説明会やメールで丁寧に説明してください。言葉が難しい条文は具体例を添えると理解が深まります。

3 周知方法の具体例

  • 社内掲示板に要点を掲示する
  • イントラネットに全文と要約を掲載する
  • 就業規則の冊子を配布する
  • 新入社員研修や説明会で説明する
    これらを組み合わせて、閲覧できない人が出ないように配慮します。

4 実務上の留意点

周知の記録を残してください(配布リスト、説明会の出席簿、メール送信履歴など)。変更した場合は施行日を明示し、影響を受ける従業員に個別通知することが望ましいです。こうした対応で誤解やトラブルを未然に防げます。

罰則規定

労働基準法第120条では、就業規則の作成・届出義務に違反した場合、事業主に30万円以下の罰金が科されると定めています。これは就業規則を作るべき事業主が作成しない、あるいは所定の手続きを行わない場合に適用されます。

具体例

  • 従業員が常時10人以上いるのに就業規則を作成していない場合:罰金の対象になります。
  • 作成後に必要な届出を労働基準監督署に行わない場合:同様に罰則があり得ます。

実務上の注意点

  • 罰金は比較的軽いものに見えますが、労働基準監督署の調査や是正勧告、労働紛争につながると企業の信頼を損ないます。
  • リスクを避けるため、就業規則は適切なタイミングで作成・変更し、速やかに届出を行い、従業員へ周知してください。
  • 不安がある場合は、社労士や労働基準監督署に相談すると確実です。

この章では、罰則の内容と実務上の注意点を中心に解説しました。必要な手続きを怠らないことが、会社と従業員双方の安心につながります。

就業規則作成のポイントと実務上の留意点

はじめに

就業規則は法令に沿うだけでなく、自社の働き方に合う内容にすることが大切です。明確なルールはトラブル防止と従業員の安心につながります。

作成のポイント

  1. 実態に合わせる
     テレワークやフレックス、育児短時間勤務など、実際の働き方を反映させます。例えばテレワークの申請方法や通信費負担の扱いを明記します。
  2. 表現を具体化する
     「遅刻は厳重注意」ではなく「遅刻30分以上で口頭注意、同月3回で書面注意」といった具体的な基準を示します。
  3. 法令確認と専門家の相談
     労働基準法や最低賃金などと整合性を取ります。疑問があれば社労士に相談すると安心です。

実務上の留意点

・従業員への説明と意見聴取:説明会や文書で周知し、代表者の意見を聞くことが望ましいです。
・定期的な見直し:法改正や働き方の変更があれば速やかに改定します。
・運用の一貫性:運用記録を残し、事例ごとの処理を統一します。

チェックリスト(簡易)

・現行の働き方を反映しているか
・記載が具体的か
・必要な手続き(意見聴取・届出)を踏んでいるか
・周知方法が明確か

これらを意識すれば、実務で使える就業規則が作れます。

まとめ

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。本章では、労働基準法第89条に基づく就業規則の作成・届出について要点を分かりやすくまとめます。

  • 法的義務と目的:就業規則は事業所に義務が生じた場合に作成・届出が必要です。従業員とのルールを明確にし、トラブルを防ぐ基盤になります。

  • 記載事項と手続き:賃金や労働時間、休日、退職など基本的な事項を明確に記載し、作成や変更時には所定の手続きを踏み、労働基準監督署へ届出します。

  • 周知と保存:従業員への周知・掲示や書面配付を怠らないことが大切です。最新版を社内で確実に保管してください。

  • 罰則と実務上の注意点:義務を怠ると罰則が科される可能性があります。分かりやすい表現にし、従業員代表と協議し、定期的に見直す習慣をつけてください。必要に応じて専門家に相談することをお勧めします。

適切な就業規則は企業と従業員の信頼関係を支えます。丁寧に作成・維持していきましょう。

退職の悩み、Yameriiにお任せください

もう無理しなくて大丈夫。
Yameriiがあなたの退職を全力サポート!


✅ 最短即日退職
✅ 会社とのやり取りゼロ
✅ 追加料金なしの明朗会計

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次